第3話 窓の外
文字数 417文字
いつの間にか、また眠ってしまったらしい。次に眼を覚ました時には外はすっかり明るくなっていた。
寝床を出て、ふと窓の格子越しに中庭の社 を眺めた藤音は、あら? と形のよい唇を動かした。
白の上着に紅袴。長い髪をひとつにまとめた、いつもの桜花 の姿がない。
代りに別の侍女が社の周囲を掃き清めている。
窓の外を眺めたままの藤音に隼人が声をかける。
「外に何か?」
「今朝は桜花の姿が見えないと思って……」
天宮 桜花は九条家に仕える巫女であり、舞いの名手でもある。天女の末裔と言われる家系に生まれ、癒しの力を持った不思議な少女だ。
とはいえ日頃はごく普通の娘であり、いつもなら桜花がせっせと城の中庭にある小さな社の手入れをしている様子が見えるのだが。
「桜花どのなら今日は休みで、遠海 の祖父どのに会いに行くという話だったけど」
「遠海に……」
藤音は夏の間過ごした海辺の村を懐かしく思い出した。波音の響くあの里で、自分たちは初めて心が通いあったのだ。
寝床を出て、ふと窓の格子越しに中庭の
白の上着に紅袴。長い髪をひとつにまとめた、いつもの
代りに別の侍女が社の周囲を掃き清めている。
窓の外を眺めたままの藤音に隼人が声をかける。
「外に何か?」
「今朝は桜花の姿が見えないと思って……」
とはいえ日頃はごく普通の娘であり、いつもなら桜花がせっせと城の中庭にある小さな社の手入れをしている様子が見えるのだが。
「桜花どのなら今日は休みで、
「遠海に……」
藤音は夏の間過ごした海辺の村を懐かしく思い出した。波音の響くあの里で、自分たちは初めて心が通いあったのだ。