第115話 敗退
文字数 574文字
王都の奪還をきっかけに、羅紗では制圧された地方でも反乱が起きていた。
自分たちの国を取り戻す──民衆の抵抗のうねりは日ごとに大きくなり、倭軍は各地で敗退を余儀なくされていた。
麗江の港でも同様だった。農民や漁民たちは義勇兵となり、山に潜んで港に奇襲をかけてきた。
司令官であった敷島は早々にこの地を捨てて逃げ出していた。
しかし昼夜とない奇襲に悩まされながらも、曽我水軍は麗江にとどまり続けていた。
港には続々と倭国の兵が集まってくる。自分たちまで逃げ出したら、いったい誰がこれらの兵たちを故国へ運ぶというのか。
幸い、羅紗水軍は王都を奪還した後、落ちのびた国王と合流するために、多くが北へ向かったという情報を得ている。今しばらく時は稼げるだろう。
将の曽我兼光は隼人が戻って来るのを待っていた。
まっすぐな眼をしたあの若者と、彼が率いる九条軍を。
約定を交わしたのだ。九条の兵たちを船に乗せ、故国へ連れて帰ると。
だが、傷つき疲れ果てて麗江まで戻ってきた九条軍の中に、隼人の姿はなかった。生死さえ不明だという。
後からやって来る兵のために水軍の一部を残し、後ろ髪を引かれる想いで兼光は出港しなければならなかった。
第二部 完
自分たちの国を取り戻す──民衆の抵抗のうねりは日ごとに大きくなり、倭軍は各地で敗退を余儀なくされていた。
麗江の港でも同様だった。農民や漁民たちは義勇兵となり、山に潜んで港に奇襲をかけてきた。
司令官であった敷島は早々にこの地を捨てて逃げ出していた。
しかし昼夜とない奇襲に悩まされながらも、曽我水軍は麗江にとどまり続けていた。
港には続々と倭国の兵が集まってくる。自分たちまで逃げ出したら、いったい誰がこれらの兵たちを故国へ運ぶというのか。
幸い、羅紗水軍は王都を奪還した後、落ちのびた国王と合流するために、多くが北へ向かったという情報を得ている。今しばらく時は稼げるだろう。
将の曽我兼光は隼人が戻って来るのを待っていた。
まっすぐな眼をしたあの若者と、彼が率いる九条軍を。
約定を交わしたのだ。九条の兵たちを船に乗せ、故国へ連れて帰ると。
だが、傷つき疲れ果てて麗江まで戻ってきた九条軍の中に、隼人の姿はなかった。生死さえ不明だという。
後からやって来る兵のために水軍の一部を残し、後ろ髪を引かれる想いで兼光は出港しなければならなかった。
第二部 完