第17話 予想外の問題

エピソード文字数 534文字

 領主夫妻に辞意を打ち明けてから、ひと月近く。
 桜花は浮かない顔で城内の(やしろ)の掃き掃除をしていた。
 実は、予想もしていなかった問題が生じていた。後任の者がなかなか決まらないのだ。
 祖父はあちこち探してくれているのだが、親戚筋あたりに話を持っていっても、みな辞退されてしまう。
 天宮の家に生まれ育った桜花は、代々そうであったように、九条家に仕えることを当然のように思っていた。
 が、他家では直接に主君に仕えるとなると、どうも敷居が高いらしい。
 要はごく普通に祭事を執り行える神官か巫女でいいのである。にもかかわらず人材が見つからない。
 せっかく許可を得たというのに、今のままでは巫女の座を辞するわけにいかない。
 桜花はため息をこぼすと、再び箒を持った手を動かし始めた。

 冴えない表情は伊織も同じである。
 後任が決まればすみやかに祝言を挙げて、と考えていたのに、話は止まってしまったままだ。
 桜花が巫女の座を降りられなければ、いつまでたっても自分のもとへ嫁ぐことができないではないか。
 城の自室で刀の手入れをしつつ、こちらも盛大に吐息していた。




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登場人物紹介

九条隼人(くじょうはやと)


若き聡明な草薙の領主。大切なものを守るため、心ならずも異国との戦に身を投じる。

「鬼哭く里の純恋歌」の人物イラストとイメージが少し異なっています。優しいだけではない、乱世に生きる武人としての姿を見てあげてください。

藤音(ふじね)


隼人の正室。人質同然の政略結婚であったが、彼の誠実な優しさにふれ、心から愛しあうようになる。

夫の留守を守り、自分にできる最善を尽くす。

天宮桜花(あまみやおうか)


九条家に仕える巫女。天女の末裔と言われ、破魔と癒しの力を持つ優しい少女。舞の名手。

幼馴染の伊織と祝言を挙げる予定だが、後任探しが難航し、巫女の座を降りられずにいる。

桐生伊織(きりゅういおり)


桜花の婚約者。婚礼の準備がなかなか進まないのが悩みの種。

武芸に秀で、隼人の護衛として戦に赴く。

柊蘇芳(ひいらぎすおう)


隼人とはいとこだが、彼を疎んじている。美貌の武将。

帝の甥で強大な権力を持ち、その野心を異国への出兵に向ける。

阿梨(あり)


羅紗国の王女にして水軍の長。戦の渦中で隼人の運命に大きくかかわっていく。

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