第33話 皇家の血筋
文字数 640文字
今、自分が話さずともいずれは知れるはずだ。
九条家の公然の秘密というやつだ。
「柊蘇芳どのは、今の帝 の甥御にあたられる方。帝にはお子がなく、蘇芳どのを実の息子のように寵愛され、その権力は強大なものなのです」
藤音も如月もあっけにとられ、口がきけなかった。伊織の話はあまりにも遠い世界で、実感が湧いてこない。
あの蘇芳が、帝の……。
だからこの城の者たちは皆、彼にひどく気を使い、遠慮していたのか。
さらに、もうひとつの事実に気づいたのは藤音が先だった。
「ちょっと待って。あの方が殿のいとこだということは、つまり、隼人さまも皇家の血を引いていると……?」
さようでございます、と伊織は神妙に答えた。
「でも、そのような話は聞いたことがないわ。隼人さまはわたくしに、ひとことも話してくださらなかった」
「必要ないと思われたからでございましょう。確かに殿は皇家の血筋なれど、正式な皇族ではないのです」
「どういう意味ですの?」
「殿の母君、優華 さまは先代の九条家当主に嫁がれる際、皇族の身分をお捨てになられましたゆえ」
伊織とて自分が生まれる前の話で、人づてに聞いただけなのだが、とにかく知っている事柄を伝えていく。
「もう二十年近く前、先の帝には三人の皇子の他に二人の皇女がおられました。蘇芳どのの母君である姉の玲華 さまと、妹の優華さまです」
九条家の公然の秘密というやつだ。
「柊蘇芳どのは、今の
藤音も如月もあっけにとられ、口がきけなかった。伊織の話はあまりにも遠い世界で、実感が湧いてこない。
あの蘇芳が、帝の……。
だからこの城の者たちは皆、彼にひどく気を使い、遠慮していたのか。
さらに、もうひとつの事実に気づいたのは藤音が先だった。
「ちょっと待って。あの方が殿のいとこだということは、つまり、隼人さまも皇家の血を引いていると……?」
さようでございます、と伊織は神妙に答えた。
「でも、そのような話は聞いたことがないわ。隼人さまはわたくしに、ひとことも話してくださらなかった」
「必要ないと思われたからでございましょう。確かに殿は皇家の血筋なれど、正式な皇族ではないのです」
「どういう意味ですの?」
「殿の母君、
伊織とて自分が生まれる前の話で、人づてに聞いただけなのだが、とにかく知っている事柄を伝えていく。
「もう二十年近く前、先の帝には三人の皇子の他に二人の皇女がおられました。蘇芳どのの母君である姉の