第5話 婚儀の報告
文字数 443文字
一方、遠海にある天宮家の屋敷では、藤音の想像通り、桜花の祖父である十耶 が満面の笑みを浮かべていた。
「ほう……決心しなすったか」
自らたてた抹茶を手に、嬉し気な声を出す。
髪も髭も真っ白で仙人のごとき十耶は天宮家の当主であり、両親を亡くした桜花の唯一の肉親だ。
かつては草薙の神職を司る立場にあったが、今は隠居の身で、この海辺の村で静かに暮らしている。
十耶と向かいあって座った桜花と伊織は、婚儀の報告に来たものの、いざとなると緊張してしまって、どうにも落ち着かない。
「桜花はいくつになったかな」
「十八ですわ、おじいさま。伊織も同じです」
答える桜花はいつもの巫女装束ではなく、花柄の紫色の小袖姿。伊織は髪を上でまとめ、やや改まった上着と袴を身に着けている。
「いつ二人が一緒になるのかと、楽しみに待っておったのじゃよ。殿にはもう話されたのかな」
「いいえ、まずはおじいさまに、と思って」
「一番に来てくれるとは嬉しいのう。伊織どのは家の方々には?」
「城下に戻ったら父に話すつもりでおります」
「ほう……決心しなすったか」
自らたてた抹茶を手に、嬉し気な声を出す。
髪も髭も真っ白で仙人のごとき十耶は天宮家の当主であり、両親を亡くした桜花の唯一の肉親だ。
かつては草薙の神職を司る立場にあったが、今は隠居の身で、この海辺の村で静かに暮らしている。
十耶と向かいあって座った桜花と伊織は、婚儀の報告に来たものの、いざとなると緊張してしまって、どうにも落ち着かない。
「桜花はいくつになったかな」
「十八ですわ、おじいさま。伊織も同じです」
答える桜花はいつもの巫女装束ではなく、花柄の紫色の小袖姿。伊織は髪を上でまとめ、やや改まった上着と袴を身に着けている。
「いつ二人が一緒になるのかと、楽しみに待っておったのじゃよ。殿にはもう話されたのかな」
「いいえ、まずはおじいさまに、と思って」
「一番に来てくれるとは嬉しいのう。伊織どのは家の方々には?」
「城下に戻ったら父に話すつもりでおります」