第52話 船賃の代わりに
文字数 465文字
「ひとつ、おたずねしたいのですが」
「何ですかな」
「行きと帰りとを合わせて、どのくらいの船賃をお支払すればよろしいでしょうか」
「船賃など要りもうさぬ」
「そうはまいりません。どうかお教えください」
うむ、と兼光はうなった。
「では、こういたしましょう。船の上ではいろいろと人手が要りまする。草薙の方々は自分の兵糧を持参し、あとは櫓をこいだり、帆を上げたり、船の運航を手伝っていただく。いわば労働が船賃代りですな」
「本当にそのようなことでよろしいのですか」
武士に二言はございませぬぞ、と兼光は豪快に答える。
恐縮しつつも隼人は内心ほっとしていた。
何しろ草薙には資金がない。やりくりに苦労している家老の結城が狂喜する姿が眼に浮かぶようだ。
「このご恩は終生忘れません。万が一、何かお困りになった折には、ぜひ草薙をお頼りください。われら、全力でお助けいたします」
「それは心強い」
眼尻に皺を寄せ、兼光は頼もし気に笑った。
「何ですかな」
「行きと帰りとを合わせて、どのくらいの船賃をお支払すればよろしいでしょうか」
「船賃など要りもうさぬ」
「そうはまいりません。どうかお教えください」
うむ、と兼光はうなった。
「では、こういたしましょう。船の上ではいろいろと人手が要りまする。草薙の方々は自分の兵糧を持参し、あとは櫓をこいだり、帆を上げたり、船の運航を手伝っていただく。いわば労働が船賃代りですな」
「本当にそのようなことでよろしいのですか」
武士に二言はございませぬぞ、と兼光は豪快に答える。
恐縮しつつも隼人は内心ほっとしていた。
何しろ草薙には資金がない。やりくりに苦労している家老の結城が狂喜する姿が眼に浮かぶようだ。
「このご恩は終生忘れません。万が一、何かお困りになった折には、ぜひ草薙をお頼りください。われら、全力でお助けいたします」
「それは心強い」
眼尻に皺を寄せ、兼光は頼もし気に笑った。