第13話 夫と共に
文字数 589文字
「はっきりと言わなくては通じないようですわね。桜花、わたくしから殿に申し上げてもよろしくて?」
「はいっ、ぜひに」
桜花は力をこめて返事をした。
遠回しに言っていては、なかなか気づいてもらえない主だ。奥方から説明してもらえるなら願ってもない。
「つまり、巫女のままでは伊織どのもとへ嫁ぐことはできない──だから桜花は今の役目を辞したいと申しているのですわ。桜花、これで間違いはありませんね?」
「その通りでございます、藤音さま」
ぽかんと口を開けていた隼人は、数秒たってからやっと、ぱん、と手を叩いた。
「ああ、そういうことか!」
やっとわかってくださいましたのね、と藤音がいささか疲れた声を出す。
「それはめでたい。そういう理由なら、むろん引き止めはしませんよ。で、祝言はいつ?」
「お気が早すぎます、殿」
身を乗り出す隼人に答えたのは伊織である。続いて桜花が、
「辞する前に後任の者を決めねばなりません。祖父とも相談して、九条家にお仕えするのにふさわしい神官か巫女を探さなくては」
そこで一度、言葉を切り、桜花は再び頭を下げた。辞する前にどうしても伝えておきたい想いがある。
「たとえ巫女の座を降りましても、わたくしは天宮の娘。家系に伝わる力を継いだ者として、九条家をお護りするべく、生涯、夫と共に力をつくす所存にございます」
桜花の真摯な言葉に、隣に座っていた伊織も改めて深く頭を下げた。
「はいっ、ぜひに」
桜花は力をこめて返事をした。
遠回しに言っていては、なかなか気づいてもらえない主だ。奥方から説明してもらえるなら願ってもない。
「つまり、巫女のままでは伊織どのもとへ嫁ぐことはできない──だから桜花は今の役目を辞したいと申しているのですわ。桜花、これで間違いはありませんね?」
「その通りでございます、藤音さま」
ぽかんと口を開けていた隼人は、数秒たってからやっと、ぱん、と手を叩いた。
「ああ、そういうことか!」
やっとわかってくださいましたのね、と藤音がいささか疲れた声を出す。
「それはめでたい。そういう理由なら、むろん引き止めはしませんよ。で、祝言はいつ?」
「お気が早すぎます、殿」
身を乗り出す隼人に答えたのは伊織である。続いて桜花が、
「辞する前に後任の者を決めねばなりません。祖父とも相談して、九条家にお仕えするのにふさわしい神官か巫女を探さなくては」
そこで一度、言葉を切り、桜花は再び頭を下げた。辞する前にどうしても伝えておきたい想いがある。
「たとえ巫女の座を降りましても、わたくしは天宮の娘。家系に伝わる力を継いだ者として、九条家をお護りするべく、生涯、夫と共に力をつくす所存にございます」
桜花の真摯な言葉に、隣に座っていた伊織も改めて深く頭を下げた。