第9話 しみじみ語っていたら
文字数 481文字
翌日、伊織は見るからに眠そうだった。話好きな祖父に夜遅くまで延々と付きあわされたに違いない。
「ごめんなさいね、伊織」
城下へ戻る道すがら、桜花はすまない思いで詫びた。
「おじいさまは普段はひとりで暮らしているから、話し相手ができて嬉しかったのだと思うわ。ちょっとはしゃぎすぎのような気もするけど……」
まあ、たまにはいいさ、と伊織が鷹揚に言葉を返す。
「でも、家族というのはよいものだな」
突然言われて桜花は首をかしげた。何か、特に伊織の印象に残るような出来事があっただろうか。
「一緒に笑って、うちとけて食事をして、とても暖かい気がした」
「伊織……」
桜花にとってはごく当たり前の光景が、伊織には特別なものだったのだ。
しみじみ語っていたら、早くも桜花は涙目状態になっていて、伊織はぎょっとした。
失念していた。桜花は人一倍、涙もろいのだ。
「待て、泣くなっ。桜花も知っているように、別に俺とて天涯孤独というわけではないぞ。ちゃんと立派な家もある」
「ごめんなさいね、伊織」
城下へ戻る道すがら、桜花はすまない思いで詫びた。
「おじいさまは普段はひとりで暮らしているから、話し相手ができて嬉しかったのだと思うわ。ちょっとはしゃぎすぎのような気もするけど……」
まあ、たまにはいいさ、と伊織が鷹揚に言葉を返す。
「でも、家族というのはよいものだな」
突然言われて桜花は首をかしげた。何か、特に伊織の印象に残るような出来事があっただろうか。
「一緒に笑って、うちとけて食事をして、とても暖かい気がした」
「伊織……」
桜花にとってはごく当たり前の光景が、伊織には特別なものだったのだ。
しみじみ語っていたら、早くも桜花は涙目状態になっていて、伊織はぎょっとした。
失念していた。桜花は人一倍、涙もろいのだ。
「待て、泣くなっ。桜花も知っているように、別に俺とて天涯孤独というわけではないぞ。ちゃんと立派な家もある」