第23話 見知らぬ来訪者
文字数 523文字
「いつもながら本当に急だな。いつ?」
「つい先ほど到着され、今は広間にてお待ちいただいております」
ひと呼吸、間をおいてから、承知した、と隼人は答えた。
「蘇芳が来ているのなら、待たせるわけにはいかない。すぐに行かないと。それと今夜は宴の用意を」
はっ、と和臣が一礼して答え、隼人は藤音の方を見て、
「すまない、藤音。急な来客だ。続きはまた今度……」
「わたくしでしたら、お気になさらずに」
笑顔を向ける藤音に、
「藤音も着替えたら広間に来てほしい。正装でご挨拶しなくては」
はい、と返答しながらも、藤音は意外な気がした。正装で、などと言われたのは初めてだ。
藤音にとって不意の見知らぬ来訪者は、さように大切な存在なのだろうか。
「わたしは先に行っているから、和臣、藤音を部屋まで送っていってもらえるかな」
「かしこまりました」
すべての指示を出し終えると、隼人は急ぎ部屋を出た。
早足に去っていく後姿を見送りながら、和臣がぼそりとつぶやく。
「やれやれ、また無理難題を持ちこまれねばよいが……」
「え?」
藤音が聞き返すと、和臣はあわてて打ち消すように首を横に振った。
「いえ、何でもございません。それより奥方さま、お部屋へ戻りましょう。お召替えをなさらなくては」
「つい先ほど到着され、今は広間にてお待ちいただいております」
ひと呼吸、間をおいてから、承知した、と隼人は答えた。
「蘇芳が来ているのなら、待たせるわけにはいかない。すぐに行かないと。それと今夜は宴の用意を」
はっ、と和臣が一礼して答え、隼人は藤音の方を見て、
「すまない、藤音。急な来客だ。続きはまた今度……」
「わたくしでしたら、お気になさらずに」
笑顔を向ける藤音に、
「藤音も着替えたら広間に来てほしい。正装でご挨拶しなくては」
はい、と返答しながらも、藤音は意外な気がした。正装で、などと言われたのは初めてだ。
藤音にとって不意の見知らぬ来訪者は、さように大切な存在なのだろうか。
「わたしは先に行っているから、和臣、藤音を部屋まで送っていってもらえるかな」
「かしこまりました」
すべての指示を出し終えると、隼人は急ぎ部屋を出た。
早足に去っていく後姿を見送りながら、和臣がぼそりとつぶやく。
「やれやれ、また無理難題を持ちこまれねばよいが……」
「え?」
藤音が聞き返すと、和臣はあわてて打ち消すように首を横に振った。
「いえ、何でもございません。それより奥方さま、お部屋へ戻りましょう。お召替えをなさらなくては」