第19話 領主のあり方
文字数 568文字
父は領地の細かい内情などは、ほとんど家臣たちにまかせ、自分は都の政情や、今どこで戦が起こっているのか、次は誰が上洛するのか、もっぱら国の外の情勢に心をくだいてきた。
しかし隼人は違う。領内と領民に気をくばり、この国に関わってこない限り、誰が上洛しようと、ほとんど興味を示さない。
城にいる間は毎日、領地内でのさまざまな報告を受けるし、時には伊織たち少数の供だけを連れて視察に出かける。
そのため国中の者によく顔が知られているし、親しまれてもいる。
厳格だった父とは、真逆に近い。
今日の分の報告は例の陳情で最後だった。隼人はうーん、と伸びをすると、藤音の方に視線を向けた。
「藤音」
はい? と藤音も隼人を見る。
「これで今日の仕事はおしまいだ。時間も早いし、よかったら、城の中で案内したいところがあるのだけど」
「このお城の中を、でございますか?」
藤音は不思議そうな顔をした。半年近く暮らしたこの城で、どこかまだ自分の知らない場所があるのだろうか。
乱世の常で城の地下に抜け道くらいはあるだろうが、そういう類とも別のようだ。
「わたしの個人的な秘密の場所なんだ。確か藤音にはまだ教えていなかったと思うのだけど」
くすっと藤音は笑った。秘密の場所などと、一国の領主が童 のようなことを言う。
「ええ、存じませんわ。ぜひ連れて行ってくださいませ」
しかし隼人は違う。領内と領民に気をくばり、この国に関わってこない限り、誰が上洛しようと、ほとんど興味を示さない。
城にいる間は毎日、領地内でのさまざまな報告を受けるし、時には伊織たち少数の供だけを連れて視察に出かける。
そのため国中の者によく顔が知られているし、親しまれてもいる。
厳格だった父とは、真逆に近い。
今日の分の報告は例の陳情で最後だった。隼人はうーん、と伸びをすると、藤音の方に視線を向けた。
「藤音」
はい? と藤音も隼人を見る。
「これで今日の仕事はおしまいだ。時間も早いし、よかったら、城の中で案内したいところがあるのだけど」
「このお城の中を、でございますか?」
藤音は不思議そうな顔をした。半年近く暮らしたこの城で、どこかまだ自分の知らない場所があるのだろうか。
乱世の常で城の地下に抜け道くらいはあるだろうが、そういう類とも別のようだ。
「わたしの個人的な秘密の場所なんだ。確か藤音にはまだ教えていなかったと思うのだけど」
くすっと藤音は笑った。秘密の場所などと、一国の領主が
「ええ、存じませんわ。ぜひ連れて行ってくださいませ」