第38話 如月無双
文字数 584文字
「蘇芳、冗談でも言っていいことと悪いことが──」
と、隼人が言い終わらないうちに、
「わたくしでよろしければお相手いたしましょうか」
人々の視線が一斉に注がれる中、前に進み出た女がいた。如月である。
「ほう、この城にも少しは気のきく女が……」
言いかけて、その姿を認めた蘇芳はぎょっとした。
「あら、そんなに驚かれずとも、よろしいではございませんか。少々、とうは立っておりますが、わたくしとてまだまだ女。この季節、夜は冷えますゆえ、温めてさしあげましてよ」
「せ、せっかくだが、遠慮しておこう。婆 は、あ、いや、年増は……ではなくて、年上は好みではないのでな」
しどろもどろになりながら、必死に辞退しようとする。
「まあ残念、せっかく添い寝して子守歌でも聞かせてさしあげようと思っておりましたのに。ほーっほっほ」
扇を口もとに当てて如月が高らかに笑う。
固唾を呑んで見守っていた人々の間にも、どっと笑い声が湧き起こった。如月の完勝だ。
もちろん如月とて、本気でこのたわけ者の相手をしてやろうと考えていたわけではない。いわば意趣返しである。
主 夫妻に対して無礼極まりない言動の数々、如月は先ほどから怒りのあまり血管が切れそうになっていたのだ。
と、隼人が言い終わらないうちに、
「わたくしでよろしければお相手いたしましょうか」
人々の視線が一斉に注がれる中、前に進み出た女がいた。如月である。
「ほう、この城にも少しは気のきく女が……」
言いかけて、その姿を認めた蘇芳はぎょっとした。
「あら、そんなに驚かれずとも、よろしいではございませんか。少々、とうは立っておりますが、わたくしとてまだまだ女。この季節、夜は冷えますゆえ、温めてさしあげましてよ」
「せ、せっかくだが、遠慮しておこう。
しどろもどろになりながら、必死に辞退しようとする。
「まあ残念、せっかく添い寝して子守歌でも聞かせてさしあげようと思っておりましたのに。ほーっほっほ」
扇を口もとに当てて如月が高らかに笑う。
固唾を呑んで見守っていた人々の間にも、どっと笑い声が湧き起こった。如月の完勝だ。
もちろん如月とて、本気でこのたわけ者の相手をしてやろうと考えていたわけではない。いわば意趣返しである。