第4話 穏やかな日々
文字数 402文字
「そういえば今日は伊織 も非番だったはず。二人で遠海の祖父どののところに出かけたのかな」
かもしれませんわね、と藤音は相槌を打った。
桐生 伊織は隼人の身辺警護を務める若者で、桜花とは幼なじみであり、似合いの恋人同士だ。
わざわざ二人で遠海にいる桜花の祖父に会いに行ったということは、もしかしたら……。
「藤音さま、起きていらっしゃいますか」
自分の想像に唇をほころばせたところで、襖のむこうで如月 の声がした。
藤音がええ、と応じると、失礼いたします、と襖が開けられる。
如月は年の頃は四十代半ば。輿入れに付き添ってきた藤音の乳母で、忠義心厚い、しっかり者である。
「朝餉のご用意ができております。どうぞお召替えを」
そうして始まる、いつもの日々。季節は秋。木々の葉が美しく色づく頃だ。
小さな城でのつつましい毎日だが、藤音は今の暮らしが好きだった。
多くは望まない。
この穏やかな日々が続けば、それでいい──。
かもしれませんわね、と藤音は相槌を打った。
わざわざ二人で遠海にいる桜花の祖父に会いに行ったということは、もしかしたら……。
「藤音さま、起きていらっしゃいますか」
自分の想像に唇をほころばせたところで、襖のむこうで
藤音がええ、と応じると、失礼いたします、と襖が開けられる。
如月は年の頃は四十代半ば。輿入れに付き添ってきた藤音の乳母で、忠義心厚い、しっかり者である。
「朝餉のご用意ができております。どうぞお召替えを」
そうして始まる、いつもの日々。季節は秋。木々の葉が美しく色づく頃だ。
小さな城でのつつましい毎日だが、藤音は今の暮らしが好きだった。
多くは望まない。
この穏やかな日々が続けば、それでいい──。