第39話 宣告
文字数 505文字
もうよい、とうんざりしたように言い置いて、蘇芳は座を立とうとした。しかし思い直したように、再び元の位置に腰を降ろす。
「おっと、重要な知らせを忘れるところだった。俺はわざわざ都から花嫁を見に来ただけではないぞ」
「知らせ?」
隼人は慎重に訊き返した。蘇芳の考えはいつも予測がつかない。
「おまえにとっても悪くはない話だと思うが。隼人、おまえは昔から海の向こうへ行ってみたいと言っていただろう」
「確かに、その通りだが」
「ついに帝が決心なされた。年明けに、わが国は海を越えて羅紗 国に出兵する。羅紗を征服し、わが国の領土とする」
一瞬、水を打ったように広間は静まり返った。城の人々は皆、蘇芳の言葉がとっさには理解できなかった。
隼人とて同じだった。あまりに突然で、一方的な宣告。
「今、何と……?」
蘇芳は苛立ったように、
「同じことを何度も言わせるな」
生まれながらに人の上に立つ者の威厳を持って言い放つ。
「年が明けたら、羅紗国を攻める。この草薙からも兵を出してもらう。これは帝の命令ぞ!」
「おっと、重要な知らせを忘れるところだった。俺はわざわざ都から花嫁を見に来ただけではないぞ」
「知らせ?」
隼人は慎重に訊き返した。蘇芳の考えはいつも予測がつかない。
「おまえにとっても悪くはない話だと思うが。隼人、おまえは昔から海の向こうへ行ってみたいと言っていただろう」
「確かに、その通りだが」
「ついに帝が決心なされた。年明けに、わが国は海を越えて
一瞬、水を打ったように広間は静まり返った。城の人々は皆、蘇芳の言葉がとっさには理解できなかった。
隼人とて同じだった。あまりに突然で、一方的な宣告。
「今、何と……?」
蘇芳は苛立ったように、
「同じことを何度も言わせるな」
生まれながらに人の上に立つ者の威厳を持って言い放つ。
「年が明けたら、羅紗国を攻める。この草薙からも兵を出してもらう。これは帝の命令ぞ!」