第8話 枕を並べて
文字数 513文字
やっと祖父の言わんとする意図が察せられて、桜花は耳たぶまで真っ赤になった。
片や気持ちを落ち着かせようと湯呑みに口をつけていた伊織は、思いきり抹茶にむせる羽目になる。
「伊織、大丈夫 ⁉」
派手に咳こむ伊織の背中をかいがいしく桜花がさする姿は、すでに夫婦 のようだ。
「しきたりは守らねばならん。そなたたち、まさか、もう…… ⁉」
「め、めっそうもございません!」
疑いのまなざしを向ける十耶に、口もとをぬぐって伊織は必死に弁明する。
「桜花の立場は充分に承知しております。巫女の座を降り、きちんと祝言を挙げるまでは、誓って不埒 な真似はいたしませぬ!」
「よくぞ申された!」
絶妙の間合いで、十耶がぽん、と手を打つ。
「その言葉を聞いて安心しましたぞ。これで懸念は無くなりもうした」
まだ苦しげに胸もとを叩く伊織をよそに、祖父は満足げに茶をすする。
「伊織どの、今夜は泊まっていかれるのであろう? 我らはやがて身内となる間柄。枕を並べ、この爺とゆっくり語りあかそうではないか」
「はあ……」
ひどく咳こんで声をからせた伊織は、力なく返事をした。
伊織が愛しく思うのは、あくまで桜花というひとりの娘なのだが、やはり事は簡単に進みそうもなかった。
片や気持ちを落ち着かせようと湯呑みに口をつけていた伊織は、思いきり抹茶にむせる羽目になる。
「伊織、大丈夫 ⁉」
派手に咳こむ伊織の背中をかいがいしく桜花がさする姿は、すでに
「しきたりは守らねばならん。そなたたち、まさか、もう…… ⁉」
「め、めっそうもございません!」
疑いのまなざしを向ける十耶に、口もとをぬぐって伊織は必死に弁明する。
「桜花の立場は充分に承知しております。巫女の座を降り、きちんと祝言を挙げるまでは、誓って
「よくぞ申された!」
絶妙の間合いで、十耶がぽん、と手を打つ。
「その言葉を聞いて安心しましたぞ。これで懸念は無くなりもうした」
まだ苦しげに胸もとを叩く伊織をよそに、祖父は満足げに茶をすする。
「伊織どの、今夜は泊まっていかれるのであろう? 我らはやがて身内となる間柄。枕を並べ、この爺とゆっくり語りあかそうではないか」
「はあ……」
ひどく咳こんで声をからせた伊織は、力なく返事をした。
伊織が愛しく思うのは、あくまで桜花というひとりの娘なのだが、やはり事は簡単に進みそうもなかった。