第22話 いつか広い世界を
文字数 440文字
「いつかは海を越えて広い世界を見て回りたいと願っている。その時は藤音も一緒に──」
眼を輝かせる隼人に、藤音はこくりとうなずいた。
本当に隼人と世界を見て回れたら、どんなに楽しいだろう。向こう岸の見えない大河や、砂ばかりの大地や、ひっそりとたたずむ遺跡……。
遠慮がちに戸を叩く音が聞こえたのは、二人が飽きずに地球儀を眺めていた時だった。
「殿、こちらにいらっしゃいますか?」
問いかけてきた声は伊織の異母兄、和臣 のものだ。弟と同様、隼人の身辺警護が主な任務である。
「ああ。どうぞ」
隼人が返事をすると、失礼いたします、と断ってから、丁寧に戸を開けて入ってくる。
伊織よりひとつ年上で、いつもきちんとした身なりをして、整った知的な顔立ちをしている。
「これは、奥方さまもご一緒でしたか。おくつろぎのところを申し訳ございません」
「かまわないけど、何か急用でも?」
「実は、突然ではございますが、柊 蘇芳 どのがお越しになっております」
「──蘇芳が?」
一瞬、隼人の瞳が驚いたように見開かれる。
眼を輝かせる隼人に、藤音はこくりとうなずいた。
本当に隼人と世界を見て回れたら、どんなに楽しいだろう。向こう岸の見えない大河や、砂ばかりの大地や、ひっそりとたたずむ遺跡……。
遠慮がちに戸を叩く音が聞こえたのは、二人が飽きずに地球儀を眺めていた時だった。
「殿、こちらにいらっしゃいますか?」
問いかけてきた声は伊織の異母兄、
「ああ。どうぞ」
隼人が返事をすると、失礼いたします、と断ってから、丁寧に戸を開けて入ってくる。
伊織よりひとつ年上で、いつもきちんとした身なりをして、整った知的な顔立ちをしている。
「これは、奥方さまもご一緒でしたか。おくつろぎのところを申し訳ございません」
「かまわないけど、何か急用でも?」
「実は、突然ではございますが、
「──蘇芳が?」
一瞬、隼人の瞳が驚いたように見開かれる。