第12話 奥方の助け舟
文字数 449文字
考えてもみなかった申し出である。神官であった父の跡を継ぎ、桜花はよくやってくれている。
「いったい、いかがしたのですか。務めに何か不都合でも? 不具合があるのなら改善を検討しますが」
「いいえ、とんでもございません。決して不満があるわけではなくて……」
「では、なぜ?」
「ですから、その……」
桜花が顔を赤らめ、返事に窮した時。
「殿──」
かたわらで助け舟を出してくれたのは藤音だった。
「桜花が困っているではありませんか。殿はとても頭がよいのに、こういうことにはまるで気が回らないのでございますね」
「では、藤音にはわかると?」
もちろんですとも、と藤音はくすくす笑いながらうなずいてみせた。
「桜花はわざわざ伊織どのと二人で、巫女の座を辞したいと願いに来たのですよ。おわかりになりませんか」
「???」
首をひねり続ける隼人に、思わず藤音は額に手を当てた。わが夫ながら何という鈍さ……。
「いったい、いかがしたのですか。務めに何か不都合でも? 不具合があるのなら改善を検討しますが」
「いいえ、とんでもございません。決して不満があるわけではなくて……」
「では、なぜ?」
「ですから、その……」
桜花が顔を赤らめ、返事に窮した時。
「殿──」
かたわらで助け舟を出してくれたのは藤音だった。
「桜花が困っているではありませんか。殿はとても頭がよいのに、こういうことにはまるで気が回らないのでございますね」
「では、藤音にはわかると?」
もちろんですとも、と藤音はくすくす笑いながらうなずいてみせた。
「桜花はわざわざ伊織どのと二人で、巫女の座を辞したいと願いに来たのですよ。おわかりになりませんか」
「???」
首をひねり続ける隼人に、思わず藤音は額に手を当てた。わが夫ながら何という鈍さ……。