第18話 報告の合間
文字数 524文字
隼人と藤音もまた、そんな二人を心配していた。
かといって自分たちにも心当たりはない。
かつて草薙の神職を司っていた桜花の祖父が探せないでいるのだから、簡単に見つかるはずもない。
「困りましたわね……」
城の広間。隼人に寄せられる報告の合間をぬって、藤音は憂いた表情をみせた。
「こんなに難航するとは思わなかったな。草薙の領内には神官も巫女も大勢いるはずなのに」
「桜花が不憫ですわ。あれほど幸せそうにしていましたのに」
などとつらつら話しているところへ、次の報告の者がやって来る。
今度の内容は報告というより陳情だった。
先月の大雨で村の川が氾濫し、作物に被害が出てしまったので、今年の年貢を下げていただけまいか、という申し出である。
こんな場合、隼人はきちんと調査をして、申し出が事実なら大幅に年貢を下げる。
きわめて温情厚い処遇で、おかげで城の蔵はいつも空っぽだと、家老の結城などは嘆いている。
やりとりの間は藤音はほとんど口をはさむことなく、かたわらで聞いているのだが、時々父を思い出した。
藤音は白河の領主の息女として生まれ、隣国の草薙の領主のもとへ嫁いだ。
だからずっと領主というものを見ているのだが、父と隼人ではだいぶあり方が異なっている。
かといって自分たちにも心当たりはない。
かつて草薙の神職を司っていた桜花の祖父が探せないでいるのだから、簡単に見つかるはずもない。
「困りましたわね……」
城の広間。隼人に寄せられる報告の合間をぬって、藤音は憂いた表情をみせた。
「こんなに難航するとは思わなかったな。草薙の領内には神官も巫女も大勢いるはずなのに」
「桜花が不憫ですわ。あれほど幸せそうにしていましたのに」
などとつらつら話しているところへ、次の報告の者がやって来る。
今度の内容は報告というより陳情だった。
先月の大雨で村の川が氾濫し、作物に被害が出てしまったので、今年の年貢を下げていただけまいか、という申し出である。
こんな場合、隼人はきちんと調査をして、申し出が事実なら大幅に年貢を下げる。
きわめて温情厚い処遇で、おかげで城の蔵はいつも空っぽだと、家老の結城などは嘆いている。
やりとりの間は藤音はほとんど口をはさむことなく、かたわらで聞いているのだが、時々父を思い出した。
藤音は白河の領主の息女として生まれ、隣国の草薙の領主のもとへ嫁いだ。
だからずっと領主というものを見ているのだが、父と隼人ではだいぶあり方が異なっている。