第32話 たずねたきこと
文字数 646文字
「膳など持って何をされているのですか」
「今宵の宴は客人が多く、人手が足りないので手伝いを……」
「それは見上げた心がけ。ですが、少々おたずねしたいことがございます。ひとまず膳を置いてここへお座りいただけますか」
「はあ……」
言われるままに伊織は膳を置き、二人の前に座った。あの傲慢な客人とは違い、実に素直なよい若者だ。
「で、如月どの、たずねたいこととは?」
伊織が言うか早いか、如月の怒りが炸裂する。
「いったい何者ですの、あの客は⁉」
如月の剣幕に押されつつ、伊織は、そうか、とつぶやいた。
「お二人とも蘇芳どのにお会いになるのは初めてでしたね」
「ええ、あのような不躾な客、初めてですとも!」
憤慨する如月の横で、藤音も疑問を口にする。
「なぜあの客人が殿の席に座っているのですか? この城の者は皆、まるで腫物にさわるかように気を使って、あの方に接しています。かといって本心から歓迎しているようではないのですが……」
伊織は内心舌を巻いた。藤音はわずかな時間で、この場の状況を正確に把握している。
しばらく考えこんでいたが、やがて伊織は観念したように話し出した。
「仕方ないのですよ。あの方は特別なのですから」
「どう特別だというのです? そこを話してくれねば、わからぬではないですか!」
自分が叱り飛ばされているように身をすくめながら、伊織はすべてを明かそうと決心した。
「今宵の宴は客人が多く、人手が足りないので手伝いを……」
「それは見上げた心がけ。ですが、少々おたずねしたいことがございます。ひとまず膳を置いてここへお座りいただけますか」
「はあ……」
言われるままに伊織は膳を置き、二人の前に座った。あの傲慢な客人とは違い、実に素直なよい若者だ。
「で、如月どの、たずねたいこととは?」
伊織が言うか早いか、如月の怒りが炸裂する。
「いったい何者ですの、あの客は⁉」
如月の剣幕に押されつつ、伊織は、そうか、とつぶやいた。
「お二人とも蘇芳どのにお会いになるのは初めてでしたね」
「ええ、あのような不躾な客、初めてですとも!」
憤慨する如月の横で、藤音も疑問を口にする。
「なぜあの客人が殿の席に座っているのですか? この城の者は皆、まるで腫物にさわるかように気を使って、あの方に接しています。かといって本心から歓迎しているようではないのですが……」
伊織は内心舌を巻いた。藤音はわずかな時間で、この場の状況を正確に把握している。
しばらく考えこんでいたが、やがて伊織は観念したように話し出した。
「仕方ないのですよ。あの方は特別なのですから」
「どう特別だというのです? そこを話してくれねば、わからぬではないですか!」
自分が叱り飛ばされているように身をすくめながら、伊織はすべてを明かそうと決心した。