第98話 果たすべき義務
文字数 535文字
確かに美しいが、脆 い、と隼人は思った。
優雅に建てられただけの宮殿は、戦となればひとたまりもないだろう。
ふと隼人も九条の兵たちも、王宮の外壁に何かが点々と置かれているのに気づいた。眼を凝らし、それが何か理解した時、隼人の背筋を戦慄が走った。
あれは、人の首だ。
蘇芳はこの地でも抵抗しない民衆には一切、手を出さぬよう固く全軍に命令を下していた。
しかし羅紗の兵に対しては容赦しなかった。
王都を守ろうと戦った者たちは殲滅され、彼らの首はひとつ残らず城壁にさらされたのだ。
かつては活気に満ちていたであろう市場も今は荒れ果て、そこかしこに人々が虚ろな眼で座りこんでいる。
やつれた姿からは何の表情も読み取れない。異国からの侵略に怯え、疲れ果てて憎む気力さえ手放してしまったかのようだ。
命亡き首と、民衆の虚無なまなざしにさらされながら、九条軍は王宮へと入城した。
広大な敷地の一角に与えられた宿舎に入り、後の細かい指図は副官たちに一任すると、隼人は案内役の年若い侍と共に歩き出した。
この地で真っ先に果たすべき義務──柊蘇芳に目通りするためだ。
優雅に建てられただけの宮殿は、戦となればひとたまりもないだろう。
ふと隼人も九条の兵たちも、王宮の外壁に何かが点々と置かれているのに気づいた。眼を凝らし、それが何か理解した時、隼人の背筋を戦慄が走った。
あれは、人の首だ。
蘇芳はこの地でも抵抗しない民衆には一切、手を出さぬよう固く全軍に命令を下していた。
しかし羅紗の兵に対しては容赦しなかった。
王都を守ろうと戦った者たちは殲滅され、彼らの首はひとつ残らず城壁にさらされたのだ。
かつては活気に満ちていたであろう市場も今は荒れ果て、そこかしこに人々が虚ろな眼で座りこんでいる。
やつれた姿からは何の表情も読み取れない。異国からの侵略に怯え、疲れ果てて憎む気力さえ手放してしまったかのようだ。
命亡き首と、民衆の虚無なまなざしにさらされながら、九条軍は王宮へと入城した。
広大な敷地の一角に与えられた宿舎に入り、後の細かい指図は副官たちに一任すると、隼人は案内役の年若い侍と共に歩き出した。
この地で真っ先に果たすべき義務──柊蘇芳に目通りするためだ。