第153話 子どもの熱・育児のトラウマ②

文字数 917文字

今から話すことは、わしの些末な体験談じゃ。

軽く読み流してくれると助かる。

子黒猫が6~7歳頃だったかの。

夏風邪をひいての、かなり高熱が出たんじゃ。


そしてそれがきっかけで『夜驚症(やきょうしょう)』になったんじゃ。

夜驚症ってなあに?
名前の通りじゃ。

寝入りばな1時間ほどでびっくりしたように飛び起きて、パニック状態になって怯え泣き叫ぶんじゃ。


夢遊病状態で脳が眠ったまま、走ったり歩き回ったりもするんじゃ。

100人に2~3人の割合で起こり、10歳以下の男子に多いという。

高熱が出た日の夜のことじゃ。

風邪薬を飲んで寝ていた子黒猫が起き上がるや否や、カッと目を見開き、文字おこしできない声を上げ、恐怖におののき涙と汗でぐしゃぐしゃになったんじゃ。


わしは子黒猫を抱きしめ、背中をさすることしかできなかった。

わしは子黒猫が熱で頭がおかしくなったのかと、恐怖で凍りついたんじゃ。これは比喩ではない。


子黒猫がぐったり疲れ果てて寝落ちするまで、多分5~10分ほどであったと思うが、心理的な体感時間はゆうに1時間じゃ。


あの時の恐怖を上回るものは無い、きっとこれからも無い。

子黒猫は手術するようなケガを2回ほどしとるがの、「夜驚症」の方がレベチでしんどかった。

毎夜の症状が治まるまで、結局1年ほどかかったかのぅ。


子どもが錯乱しているのを目の当たりにするのは、毎晩体験しても慣れないもんじゃ。

魂が削られた。

叫び声がご近所さんに聞こえたら、虐待していると思われそうだな。
マジ、それも思った。

見えない敵に向かって「怖い―」「やめてー」と叫ぶ日もあったからのう。

子どもの脳はデリケートなんだね。
そうなんじゃ。

子黒猫は中学卒業まで、インフルエンザワクチン打っても毎年インフルにかかって高熱出す子で、やっぱりそういうときは異常行動起こすから目が離せなかったんじゃ。

でもだんだんと逞しくなってくるから、夢遊病のごとくウロウロ歩き出すのを抑えるのも大変でのう……

だから高熱にビビッているんだな。
「高熱」が育児のトラウマ。

熱が出ると平常心ではいられず、すぐ解熱剤に頼ってしまうのはこのせい。


……それもこれも、気がふれたかと戦慄した、夜驚症初回のインパクトがデカ過ぎなんじゃ!!!

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登場人物紹介

素朴で真面目なウサギ。お昼寝とスイーツが好き。三依市奥雲間村でのんびり暮らしている。

雑談がガイドラインに抵触しないよう、作者からお目付役を頼まれている。


物知りで穏やかな悪魔のお兄さん。

反ワクチン派たちが、預言やら悪魔やら千年王国やらをしきりに口にするため、気になってこちら側に遊びに来た。

山奥の奥雲間村が気に入って滞在中。

海坊主だが、奥雲間村の常世沼(とこよぬま)が気に入って棲息している。

各方面に遠慮無く喋る自由人。

喋っているのは海坊主なので大目に見てください。


町中にあるウサギの実家に住むお嫁ちゃん。

家族の健康を第一に考え、健康食品に傾倒した結果、自然派ママの洗脳を受けてしまう。

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