第53話 「免疫力アップ」という言葉はインチキ

文字数 961文字

そういえば、猫くんのお母さんは「免疫力アップ」って言葉が好きなんだよね?
それ、大好きですよ~。

お母さん、1日1回は必ず言うんだ。

フフッ。

はっきり言っちゃうけど、学問の分野では、「免疫力」って言葉は使われないよ。

そうなの? テレビで免疫力アップする食べ物特集とかやっているよ!

家にその手の本もたくさんあるし。

まっとうな医者は「免疫力」なんて言葉は使わないんだ。

「女子力」みたいなものかな? プロモーション用語だね。


免疫力アップという言葉を使う医師は、タレント医師と思った方がいいよ。


でも、まあ、患者さんにイメージを伝えるために、医師が限定的に使うことはあるかもしれないけどね。

お母さんにそんなこと言ったら、卒倒して倒れちゃうかも。
免疫ってさ、自然免疫と獲得免疫に分かれていて複雑な機能を持つ、いわばネットワークシステムだよね。


単純に「力」って表現できるものじゃないんだ。

【免疫の機能】


・自己と非自己を見分ける機能

・病原体などを侵入・増殖させない機能

・一度さらされた病原体に即座に対応する機能

・異常な「自己」を判別する機能

そっか、「システム」か。
コロナで言えば、免疫細胞が広く強く活性化したら、過剰な炎症反応「サイトカインストーム」状態になって重症化してしまう。

つまり、免疫が活性化(アップ)すれば、病気が重症化して時には死んでしまうんだ。


アレルギーも、免疫細胞が活発になることで症状がでる疾患だよ。

活性化がすべていいものとは限らないのか。
そう、免疫機能はバランスが大切。
免疫機能がダウンすることは、普通にあるよね?

僕とお父さん、お母さんからの「免疫力アップ攻撃」で、「免疫力がダウンする~」って影でふざけているんだ。


だって毎晩、精進料理みたいなんだもん。

フフッ。猫くん、さすがだね。


過労、睡眠不足、栄養不良、ストレスで免疫機能が低下することはあるよ。

それと臓器移植など医療行為に伴って、免疫抑制剤の使用で免疫機能を押さえ込むこともあるね。


とにかく免疫機能はバランス、安定させるのが一番なんだって、お母さんに説明したら?

お母さんを説得するのはハードルが高いな。


代わりに、今日勉強したことは、彼女に教えてあげようっと。

彼女? 女の子のこと?

つきあっているの?

はい。同じ高校に行けるよう、一緒に受験勉強しているんです。
………………
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登場人物紹介

素朴で真面目なウサギ。お昼寝とスイーツが好き。三依市奥雲間村でのんびり暮らしている。

雑談がガイドラインに抵触しないよう、作者からお目付役を頼まれている。


物知りで穏やかな悪魔のお兄さん。

反ワクチン派たちが、預言やら悪魔やら千年王国やらをしきりに口にするため、気になってこちら側に遊びに来た。

山奥の奥雲間村が気に入って滞在中。

海坊主だが、奥雲間村の常世沼(とこよぬま)が気に入って棲息している。

各方面に遠慮無く喋る自由人。

喋っているのは海坊主なので大目に見てください。


町中にあるウサギの実家に住むお嫁ちゃん。

家族の健康を第一に考え、健康食品に傾倒した結果、自然派ママの洗脳を受けてしまう。

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