第57話 兄ちゃんの朝帰り

文字数 788文字

早朝5時を回ると、東の空からじんわり光がにじんでくる。


常世沼に「バサッバサッ」と響く複数の羽根音に、ウサギはベッドからむくりと起き上がる。

兄ちゃん、3日振りに帰って来たな。

色とりどりの羽根を持つ、4人の派手な異形の者たち。
へえ、オマエってこんな所に住んでいるんだ。
ここで友達と待ち合わせしているんだ。ちょっと早めに着いちゃったけど。


昔、異業種交流会の船で仲良くなった相手なんだけどね。

その待ち合わせのお相手は、今、どこで何をしているわけ?

修行? 勉強中?
ブハッ、マジかよ。

待ちぼうけくらった挙げ句、すっぽかされたりして?

いや、あいつは約束を守るやつだから、そんなことはしない。
ふうん。

ま、久し振りに会えて楽しかったからさ、また遊ぼうぜ。


次、いつにする?

コールドムーン(12月の満月)はどう?
了解。絶対約束忘れるなよ。


またたっぷり可愛がってやるから。

それはこっちのセリフ、またヒーヒー泣かせてやる。
君たち本当に仲がいいねえ。
大樹の影からこっそりのぞいていた、ウサギと海ちゃん。
兄ちゃん、あんな見事なラピスラズリ色の羽根を装備していたとは。


トッポイお友達も、ブラックオパール色だったりアメシスト色だったり金色の真珠色だったり……


でも兄ちゃんの羽根が一番綺麗だな。

目が覚めるようにきらめいている……

ウサギ、「トッポイ」なんて死語だぜ。

読者さまに説明しろよ。

「トッポイ」というのは、不良っぽくてキザでイカしている人のことだよ。
説明も「死語」の羅列。
兄ちゃんは悪魔族なんだよな。

気さくだから、普段忘れがちだけど。

長老はね、仙人族のクオーターなんだって。

昨日一緒にホウレン草を収穫したとき言っていたよ。

はぁ、道理で霞のオーラをまとっている訳だ。
ウサギさん、海ちゃん、ただいま。
おかえりなさい。


兄ちゃんのワクチンは打てた?

打てたよ~~


もうカラカラ。

(こいつらのこういう会話、ついていけねえ)
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登場人物紹介

素朴で真面目なウサギ。お昼寝とスイーツが好き。三依市奥雲間村でのんびり暮らしている。

雑談がガイドラインに抵触しないよう、作者からお目付役を頼まれている。


物知りで穏やかな悪魔のお兄さん。

反ワクチン派たちが、預言やら悪魔やら千年王国やらをしきりに口にするため、気になってこちら側に遊びに来た。

山奥の奥雲間村が気に入って滞在中。

海坊主だが、奥雲間村の常世沼(とこよぬま)が気に入って棲息している。

各方面に遠慮無く喋る自由人。

喋っているのは海坊主なので大目に見てください。


町中にあるウサギの実家に住むお嫁ちゃん。

家族の健康を第一に考え、健康食品に傾倒した結果、自然派ママの洗脳を受けてしまう。

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