第103話 反ワクさんの正露丸騒動と「心理的逆転」
文字数 1,842文字
苦労するのが好きなのかな? 大変なのが好きなの?
騙されまいと思っているのは、実は臆病?
まとめて言うと、不幸が好き?
松本 俊彦 編者
日本評論社 2019年7月発行
臨床の仕事に携わっていると、クライエントの思いもよらない反応に虚をつかれたり、困惑させられたり、悩まされたりするケースにしばしば遭遇する。
たとえば(こちらは味方であり協力者であるにもかかわらず)クライエントから攻撃的な言葉や態度をぶつけられる、クライエントにとって有効な治療を提案している間に、「それはできない」「それはいやだ」「これは○○」などさまざまな抵抗をされる、治療者から見て「今日はなかなかうまくいったな」と思える治療の直後に「全然よくなかった」「まったく変わっていない」というような非常にネガティブな感想を言われる、次の予約までの間に「こういうことをしてください」とお願いしたことをまったくしてもらえず「こういうことはしないでください」と注意を促していたことを行って悪化させて戻って来られてしまう、(略)などといったような苦い経験は、臨床治療や回復の援助をされている方ならどなたでもおもちであろう。
心理的逆転という用語は、その状態が、自己利益に向かうという人の通常の動機づけの状態を逆転させ、敗北や不利益へと向かう行動をとらせるように見えるため名づけられた。
(略)
このような人々はしばしば慢性的に不機嫌で、人生に対して否定的な姿勢を示す。
②他者の助けを拒絶したり、その助けを無効化する
③目標達成など肯定的な出来事に対して、落ち込んだり、罪悪感を持ったりする
④他者から怒りや拒絶を引き出しておきながら、その後で傷ついたり、敗北感や屈辱感を抱く
⑤充分に社交的スキルがあるにもかかわらず、喜びの機会を拒否し自らが楽しんでいることを認めない
⑥発揮できる能力があるにもかかわらず、大切な仕事を完遂することができない
⑦常によい扱いをしてくれる人に対して退屈を感じたり、無関心である
⑧相手に求められてもおらず、やめて欲しいと言われるような、過度に自己犠牲的なことを行う
複雑性PTSDというものは、重度のストレス要因(長期的な虐待、放棄など)にさらされた結果、引き起こされる心的外傷で。
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