第61話 マレビトさんの訪れ

文字数 1,231文字

カラコロ……控え目なドアベルの音。
こんにちは。

今日はマレビトさんを連れて来ましたよ。

コンニチハ
ヒョコッとお辞儀をするマレビトさん。
長老、いらっしゃいませ。

マレビト殿も、どうぞこちらへ。

はじめまして、マレビトさん。

メニューはこちらです。

……オマカセシマス
この通りシャイなお方なんだよ。

みんな、仲良くしてあげてね。

(ペコリ)
こちらこそ、よろしくね。

今日は小雨が降って寒いから、みんなで鍋パーティでもしませんか?

いいねえ。マレビトさんもご一緒に。
(コクリ)
今夜は常夜鍋だよ。

長老と収穫したホウレン草に、大豆ミートと長ネギと……椎茸とお豆腐、ニンニクも入れよう。


マレビト殿、苦手なものはありますか?

そのメニューならダイジョブ。
ウサギお手製のポン酢タレは絶品なんだ。

シメに餅かうどんを入れようぜ。

今日は無礼講だ。

海ちゃんのダイエットは、明日からにしよう。

賑やかなお喋りのなか、店内を見渡し、キョトキョトするマレビトさん。
(うわ、この子カワイイ、僕の色に染めてみたい)
(あ、兄ちゃんがロックオンした!)
ま、兄ちゃんのご機嫌が直ってきてよかったな。

兄ちゃんがヘソ曲げると、人類が滅亡する。

人類が滅亡? 

ダイジョブ。そういうときは、僕が弥勒(ミロク)さんを呼ぶ。

え? 弥勒くんと知り合いなの!?

もしかして異業種交流会の船に乗った?

うん。

ボクと弥勒さん、船に乗る前、軌道エレベーターで酔っちゃって、医務室で仲良くなった。

えっと……弥勒菩薩さまは現在、兜率天にいらっしゃって、遥か彼方の未来、56億7千万年後の死滅した地球に降臨する約束らしいよ。


マレビト殿、そんな弥勒菩薩さまをどうやって呼ぶの?

ボクは時間や距離を溶かせる。集中すれば次元も。


次元を少し溶かして抜け道を作って呼ぶよ?

じゃあ、弥勒菩薩さまもせっかくだから鍋パーティに呼んだらどうだ?

たまには修行の息抜きも必要だ。

そ、それは、次元境界管理事務局保全計画課に事前申請しないとまずいから!


一度事務局に目を付けられると、厄介だよ。

僕も異業種交流会の船に乗ったよ。

今晩ゆっくりその時のお話しでもしようよ。


(この子のスペック超レア。絶対欲しい、自分のものにしたい!)

(ヤバい、兄ちゃんの目が潤んでいる!)
潤んだ兄ちゃんの目をスルーして、なぜか海ちゃんをガン見する、マレビトさん。


マレビトさんは指で海ちゃんをつつき出す。

お? お? なんだなんだ、マレビトさん、くすぐったいよ。
オモシロイ、初めて見るカタチ。

気に入ったカモ。

(海ちゃん、邪魔しないで!)
(兄ちゃん、誤解だよ~~)
秘湯のある静かな常世村。


知る人ぞ知る常世カフェは、時空次元が混濁し、今日もさまざまなお客さまが訪れます。

作者より:


コロナも収束しつつあるので、少し連載をお休みする予定です。

またなにかトピックがあれば、アップしたいと思います。

ここまでおつき合いいただき、誠にありがとうございました。


(特になにもなければ、ひっそりと『完結』にするかもしれません)

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登場人物紹介

素朴で真面目なウサギ。お昼寝とスイーツが好き。三依市奥雲間村でのんびり暮らしている。

雑談がガイドラインに抵触しないよう、作者からお目付役を頼まれている。


物知りで穏やかな悪魔のお兄さん。

反ワクチン派たちが、預言やら悪魔やら千年王国やらをしきりに口にするため、気になってこちら側に遊びに来た。

山奥の奥雲間村が気に入って滞在中。

海坊主だが、奥雲間村の常世沼(とこよぬま)が気に入って棲息している。

各方面に遠慮無く喋る自由人。

喋っているのは海坊主なので大目に見てください。


町中にあるウサギの実家に住むお嫁ちゃん。

家族の健康を第一に考え、健康食品に傾倒した結果、自然派ママの洗脳を受けてしまう。

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