969日前 チェントフォーレ比企がJリーグを制する
文字数 1,048文字
アディショナルタイムに突入して残り時間は4分。スコアは3対3のイーブン。
優勝する条件は最終戦のこの直接対決で勝つこと。引き分けも許されない。
しかし、トロピカール南紀白浜は引き気味の布陣。このままだと――、まずい。南紀白浜がロングシュートを放った!
キーバー避けちゃ駄目……。
絶望的な一点を失いましたね。
所詮はチームを作って一月で日本一に昇りつめるなんて夢だったのさ。
トロピカール南紀白浜のリーグ五連覇が決まる。パンダもオープンカーに乗せて凱旋するらしい。
それを見て帰ろう。
はあはあ。
まだ三分ある。メイク奇跡を起こすぞ。全員攻撃だ!
チェントフォーレ比企が誇るバックス陣がついに解き放たれた。
すごい波状攻撃。でも南紀白浜はフォワード一人以外全員がゴール前。
あっ、奪われた。まずい。
和歌山まで来た五千人のサポーターの絶叫に私の実況がかき消されたが、
悪霊からパスを受けたドツボリーナがそのままドリブルで七人抜き。
最後は飛びだしたキーパーを嘲笑うかのようなループシュート。同点だ。
しかし残り二十秒。
南紀白浜はゆっくりボールを回せば――
素晴らしい。
でもボールは転々と右サイドに。出てしまったら相手ボールでラストプレイだ。
うおおおおおおお! 執念キャッチ!
そして、届け! 受け取れ!
中里さんからの精確なロングパスを前線で受けたボス宇宙人は、司令塔ドツボリーナへと――。
ドツボリーナと町田のエースがアイコンタクトを刹那に交わした。
おお、完璧に虚を突いた。敵も味方も町田のエースの動きだけに対応していた。
完全フリー!
ああ、キーパーが魂のセービング。
だ、だとしても、こぼれ球あるところには……。
マーク四人を引きずりながら、頭から飛びこむ町田のエース。
ボールは力なきままゴールへと転がる……。
おまわりさんに似た服装の主審が笛を鳴らす。
こうして俺たちはチーム発足一か月でJ1を制するというレジェンドを作った。
しかし、俺たちの伝説はまだまだこれからだ!
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