シン・ドンキ
文字数 1,999文字
青である俺と妖魔である『幼女ぽい何か』。その終わりなき戦いの断片を、よりリアルに、よりダイナミックに――。ヒューマニズムを排除したストーリーが始まる。
シン・ドンキ
サングラスに黒スーツなどと陳腐なスタイルの男がこめかみに指先を当てる。
かくいう俺もサングラスにデニムだ。待ち合わせに指定されたトーキョー駅の地下街では目立つ二人だ。
男が笑う。
俺は男のあとに続く。
目が笑わぬ背高い老人が立ち上がり手をつきだす。
握りかえすほど、俺は愚かでない。
非常時における国防軍最高司令官である男へ敬礼をする。
総理は大儀そうにうなずいた後に。
首相官邸の窓にカーテンをかけさせて小声になる。
美人秘書が助け舟を出したあとに、俺へと微笑む。
彼女ならば知っている。通り名は『スパイシーエロス氷室』、略してスエヒロだ。その名の通りに、クールでスパイシーでエロそうだ。
さすがは筆頭秘書だ。先の先まで読んでいやがる。
スエヒロは夜も有能だった。
スエヒロがささやく。
スエヒロが笑いながら俺の首を指で横になぞる。シーツで体を覆い起きあがる。
彼女はホテルのベランダに向かう。俺も半裸のままで続く。……グンマ県民を倒せたならば相当な威力だろう。だとしてもぶっつけ本番は避けられない。
夜景が美しい。
いずれトーキョーは炎上する。
青である俺はシャワールームに向かう。
二日後、俺はヴー母娘とシナガワの水族館で落ち合う。オーラ漂う連中を連れてきていた。
ユカリが七十近い四人組を紹介する。
男たちがハモる。
ヴーも七十近い四人組を紹介する。
男たちがハモる。
二人組の男がハモる。
危険なだけで役に立ちそうにない連中だ。
埋め立て地を埋め尽くすコンテナ群が爆破炎上した。
巨大化した『幼女ぽい何か』がついに上陸を果たした。
十人の六十代男性が瞬殺される。
巨大類人猿であるヴーが言う。
なんてことだ。そんな設定 だけで『幼女ぽい何か』が苦しみだした。
四十近いユカリが叫ぶ。
緊張しまくった俺は、子どもの頃から見知った呆れ顔の類人猿へと。
背後から声がした。
スエヒロが言う。
翌朝、官邸で総理が笑う。
俺の回答は及第点でないだろう。
スエヒロが挑発的に見つめかえす。
やれやれ。休む間もないか。