シン・ドンキ

文字数 1,999文字

青である俺と妖魔である『幼女ぽい何か』。その終わりなき戦いの断片を、よりリアルに、よりダイナミックに――。ヒューマニズムを排除したストーリーが始まる。
    シン・ドンキ




あははは
あははは
うへへへ
お待ちしておりましたミスター
 サングラスに黒スーツなどと陳腐なスタイルの男がこめかみに指先を当てる。
青と呼んでもらおう
 かくいう俺もサングラスにデニムだ。待ち合わせに指定されたトーキョー駅の地下街では目立つ二人だ。
このキャラクターストリートにショップをだすのが夢です
 男が笑う。
…………。
ハッ

でも無駄話はできません。あの方がお待ちです

……。

 俺は男のあとに続く。






君がカラフルアーミーの生き残りか。ミエ戦役での活躍は中央にも届いている

 目が笑わぬ背高い老人が立ち上がり手をつきだす。

 握りかえすほど、俺は愚かでない。

お目にかかれて光栄です、総理
 非常時における国防軍最高司令官である男へ敬礼をする。
……。
私が呼ばれた理由は分かっております。

巨大化した『幼女ぽい何か』がトーキョー湾を北上している。その上陸を阻止する

 総理は大儀そうにうなずいた後に。
それも大事だが、君にはもう一つ任務を与えたい。

……おい

はっ
 首相官邸の窓にカーテンをかけさせて小声になる。
2000字以上と言うことは、掌編も20万字も同じ土俵で評価するのか?


それを探ってくれ

……。
総理。時間がございません。彼には『幼女ぽい何か』を倒すことに専念してもらうべきです
 美人秘書が助け舟を出したあとに、俺へと微笑む。
私があなたをサポートします
 彼女ならば知っている。通り名は『スパイシーエロス氷室』、略してスエヒロだ。その名の通りに、クールでスパイシーでエロそうだ。
ならばさっそく最前線に移動しよう
オダイバに宿がとってあります

 さすがは筆頭秘書だ。先の先まで読んでいやがる。

















 スエヒロは夜も有能だった。




『幼女ぽい何か』を倒すのに必要なのは三種の神器。すなわちロングヘアー、ミステリアス、ツンデレ……。

いずれも現在ニホンでは枯渇してしまった

 スエヒロがささやく。
ツクバ大学の研究であらたな神器が見つかったと聞くが
さすがね青。それはトップシークレットよ
 スエヒロが笑いながら俺の首を指で横になぞる。シーツで体を覆い起きあがる。
『幼馴染』『ヒーロー』『始発』……。


タカサキ市では通用した

……。
 彼女はホテルのベランダに向かう。俺も半裸のままで続く。……グンマ県民を倒せたならば相当な威力だろう。だとしてもぶっつけ本番は避けられない。
……。

 夜景が美しい。(かたわ)らには漆黒の海――そのどこかに『幼女ぽい何か』すなわち『違法だけど合法のふりをしたロリの真似』がいる。

 いずれトーキョーは炎上する。

……。
猶予をくれ。仲間を見つけだす

 青である俺はシャワールームに向かう。









……。
 二日後、俺はヴー母娘とシナガワの水族館で落ち合う。オーラ漂う連中を連れてきていた。
私が契約したのは『エイセスデューク(公爵)
 ユカリが七十近い四人組を紹介する。
「「「「青いレモンの味がしますね」」」」
 男たちがハモる。
ヴヴヴ……、私がお願いしたのは『山梨バンド』です
 ヴーも七十近い四人組を紹介する。
「「「「ヒーローになるのは、それは今ですよ」」」」
 男たちがハモる。
「「そして私たちが狩人(かりんちゅ)だ」」
 二人組の男がハモる。
「「八時ちょうどは始発でないがな」」
……。
 危険なだけで役に立ちそうにない連中だ。
彼らには退去してもらえ――
 埋め立て地を埋め尽くすコンテナ群が爆破炎上した。
あ、あれは……
……。
 巨大化した『幼女ぽい何か』がついに上陸を果たした。
「「「「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」」」」
 十人の六十代男性が瞬殺される。
ヴヴヴ……私たち三人で戦いましょう
 巨大類人猿であるヴーが言う。
青は、幼馴染であるユカリの子どもの頃からのヒーロー。なんだかんだラブコメしていた二人はついに結ばれる。始発電車で朝帰りする娘を待つ私
うわああ
 なんてことだ。そんな設定(ベタ)だけで『幼女ぽい何か』が苦しみだした。
とどめをさしましょう。

それは、ヒーローであるあなたからのプロポーズです!

 四十近いユカリが叫ぶ。
おばさん
まったくもう
ガンバッテ
 緊張しまくった俺は、子どもの頃から見知った呆れ顔の類人猿へと。
ユ、ユカリちゃんを僕のお嫁さんに――
不要です
 背後から声がした。
妖魔は逃亡しました。深追いは禁物です

 スエヒロが言う。







肩透かしの展開に気落ちしたかな?
 翌朝、官邸で総理が笑う。
リアルな設定ではよくあります
……。
 俺の回答は及第点でないだろう。
それに、なる戦いはこれからですよね?
気づいていたの?
 スエヒロが挑発的に見つめかえす。
追加ミッションです。月末まで二十万字溺愛小説を書いてもらいます
寸評は期待しないでくれ
 やれやれ。休む間もないか。
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