21998日前 添え物になる

文字数 1,093文字

『災難だったな。いざとなれば、宿の仲居として手伝ってもらってもいい。明日は遅刻するなよ』
もちろん。じゃあね。


……婚活も座礁しかけているし、金沢で働くのもありかな。

明日は名古屋か。ダブルデートと言っても若女将がメインで、私は添え物だし。

ひさしぶりだな。時間までカフェで打ち合わせするぞ。
はいはい。(三十過ぎると目の色が変わるな。やっぱり私も焦らないと駄目か。はっ、また心の声が聞こえていたら……。大丈夫みたいだな。それほどまでに彼女は必死か)
おばの紹介の医師が相手だ。三十六歳の国立大卒。今までは病院勤務だったが開業したいそうだ。できれば、子どもの頃に育った金沢で内科をやりたいらしい。もう一人は彼の患者でバツイチ調停中。現在は無職。そちらのお相手をしてほしい。
……。

ずいぶんと差があるようだけど、期待してなかったし食費交通費もだしてくれるからどうでもいいや。

中島はまだ二十代だろ? 今回は勉強で我慢してくれ。いずれ良い話が雷のように降ってくる。その無職も、これからの男かもしれないしな。
了解。時間だね、行こう。
こんにちは、医師の大谷です。予想年収は五千万円。清廉潔白で、これまで患者に尽くしてきました。

若女将さん、結婚を前提にお付き合いをお願いします。

いきなりかよ! でも、ぽっ
こんにちは、無職の藤浪です。予想年収はゼロ円。粘着質で、これまでギャンブルに注ぎこんできました。

魔法少女中島さん、金を貸してもらえますか?

……いきなりかよ。
実家の旅館の手伝いは続けてくれていい。僕は素人だけどオブサーバーで参加してもいいかな。

魔道団だって、一段落するまでは続けるべきだ。でも危ないことは駄目だよ。

え、ええ。……とりあえずはお互いを知ることから始めよう。
もちろんさ。
キャバクラは続けよう。お店につけで行ってもいいかな。魔道団の報酬は歩合制だよね? だったら危険な任務に積極的に参加して、お金を貸してください。
ワンダーツーダーサンダー!
ぎゃー
大谷さんが迅速かつ適切な処置をしてくれたから、藤浪さんも生き返ってよかったな。

私たちは来週金沢で会うことになった。今日はありがとう。気をつけて帰れよ。ゴホゴホ

気になる咳だね。若女将も無理し過ぎないように。ばいばい!


はああ。若女将もよく見れば美人だし、メイク落とせばさらに美人だし、根は真面目だし。さすがは医者だな、見抜いている。


……新幹線の席はどこだ? 男と相席かよ。荷物置いてあるし。とことんついてないな。


すみません、どかしてもらえますか?

失礼……? 君は
あなたは……。
運命のいたずらに翻弄される男と女たち。だが決戦の刻は否応なく近づいていく……。
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