ドン・キホーテを継ぐ者―NEO―(2)

文字数 1,011文字

ヴーの元ネタはウルトラマンのウー。神回ともいわれている。誰もが知っている知識よね
 シャワーを浴び終えた兼業市長が言う。
……。
このシャワー室はイチカワ市から譲られたもの。やはりみんなが知っているネタだけど、ちょっと古いかしら
……。
 ウーよりは新しいだろう。ちなみにガラス張りはスモーク加工されて外から覗けなかった。

俺を呼んだ本当の理由は?


 全裸にバスローブだけを羽織った俺が尋ねる。イチカワ前市長が全国各市に配ったものだ(嘘)。

エ?

…テヘ

キッ

 市長が動揺したかのような演技をする。見透かされているのに気づき小さく笑う。真顔に戻る。
これは歯科医の勘だけど
……。
今回も優秀賞ただ一人しか発表されない気がする




















 遠く離れた高架から轟音が響く。これはコダマだな。オーガキ市への滞在が長引くにつれ、通過するだけのシンカンセンの音を聴き分けられるようになってきた……。

あれは祭りだよ。参加することに意義がある。それだけの話さ
 俺は目を合わせずに答える。
分かっているわ。誰もが楽しんでいる。盛りあがっている
……。
でも……みんな寂しがり屋で恥ずかしがり屋。

自分が選ばれるなんて高望みしてない振りして、ガンガンに期待している。だってそれが次なる創作活動につながるはずだもの……。

それなのに参加作品の99.99995%をスルーなんて馬鹿げている! ふざけている!

 市長の目から悔し涙が流れ落ちる。
……?
これに目を通して
 資料を一枚渡される。それは、市長が投稿した小説を公費でプリントしたものだった。

読ませてもらうよ

(五千字丁度のストーリーか……






 ………………読み終えてしまったぞ。どんな言葉をかけるべきだ?)


やっつけでも、押しつけられたでもない。忙しいだけだ。そしてこれは温情でも寸評できない”
“ふふふ。ミステリアスすぎて理解できなかったわ”
“つまらなすぎる! こんなのでコメントを求めるなよ。そ、それより君にむぎゅーされたいな。へへへ”
“カルルス炎上”






 

次の果し合いで、俺とヴーが優勝する

 俺はありきたりの言葉を選ぶ。


……。
そうすれば願いがひとつ叶う。そしたら最高賞だけでなく佳作も――昔のように百人も千人も選ばれるように戻してやる
ああ、青……
 歯科医兼業市長が俺の胸にもたれる。
(俺は夜行列車だぜ。いつまでも青春十八歳。朝まで止まらないぜ)

 そんな言葉を心で口走りながらオーガキ市の夜が更けようとする……。


 ……。


 ……。

(カルルス炎上?)
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