330日前 自力であがきもだえる
文字数 1,131文字
宇宙人による監禁2日目。クラッシュまで330日。そして、本来のクラッシュは今日。
だが、地球人の誰も知らないここはセーフティ。つまりこの牢屋にいれば、俺は本来の運命を突破することになる。
……充実度はたしか90%以上あったな。それがここまで目減りするのは、おそらく奥飛騨での夜が充実しすぎて、平均すると残りが19%になってしまった。……それだけでないはずだ。おそらくクラッシュまでの時間と同じく充実度も変動する。
門番の宇宙人に叱られる。
俺は慌てて懐中時計を見る。
06h23m
俺の魂の叫びが、町田のどこかの地下牢にこだまする。
……パートナーである早霧も6時間ちょっとでクラッシュする。
俺なんかどうでもいい。彼女を守るためにあがかないと!
じつはここまでは三食支給されている。だが朝食には濃すぎて残してしまった中華がまだ片付けられてない。……早霧が描いた魔法陣。酢豚とチンジャオロースを用い、記憶を頼りに地面へ描く。
プブンバの兄だけあって熱い悪魔だ。だが俺は冷静だ。
熱い悪魔パバンバが倒される……。
ボス宇宙人が、懐メロそうで全然違うものを、すなわち著作権に絡まないものを口ずさみながら去っていく。
今は8時過ぎだから……懐中時計を覗く。
44m12s
もがきあがくほどに深みへ嵌まっていく。
早霧のクラッシュもあと44分。
もう一度充実した二人だけの夜を送りたかった……。