330日前 自力であがきもだえる

文字数 1,131文字

宇宙人による監禁2日目。クラッシュまで330日。そして、本来のクラッシュは今日。

だが、地球人の誰も知らないここはセーフティ。つまりこの牢屋にいれば、俺は本来の運命を突破することになる。

……充実度はたしか90%以上あったな。それがここまで目減りするのは、おそらく奥飛騨での夜が充実しすぎて、平均すると残りが19%になってしまった。……それだけでないはずだ。おそらくクラッシュまでの時間と同じく充実度も変動する。

ぶつぶつ、うるせえんだよ。心のうちで喋れ。
門番の宇宙人に叱られる。
そうそう、ボスがやっぱ地球人の時間観念に合わせることにしたわ。

なんで即処刑は今日になったわ。やったね。

どひゃー!
俺は慌てて懐中時計を見る。
06h23m
6時間23分だと? ちょっと待て。宇宙人の思いつきにすら左右されるのでは、そもそもこの数値には意味がないではないかぁ!!!!!
俺の魂の叫びが、町田のどこかの地下牢にこだまする。

……パートナーである早霧も6時間ちょっとでクラッシュする。

俺なんかどうでもいい。彼女を守るためにあがかないと!

だが宇宙人はパッと見ただけでも五千人ぐらいいたよな。ここを逃げだすことは難しい……。

俺も悪魔使いの端くれだ。魔法陣で召喚してやる!

じつはここまでは三食支給されている。だが朝食には濃すぎて残してしまった中華がまだ片付けられてない。……早霧が描いた魔法陣。酢豚とチンジャオロースを用い、記憶を頼りに地面へ描く。
朝から呼ぶ奴は誰だ?
うおお、まさかのプブンバ!
俺は長男のパバンバだ。三男と違い、レベルは258だ。

……お前は、四男のぺベンバを倒した中里五希だな?

ここで会ったが百年目! お前の体を好きにしてやる!

朝からうるさいな。ボスである私が見に来てしまったぞ。

……お前は愚かな地球人ではないな?

俺は悪魔だ。宇宙人め俺と勝負しろ! 勝ったらその体を好きにさせろ!
プブンバの兄だけあって熱い悪魔だ。だが俺は冷静だ。
猛きパバンバよ。こいつはレベルが405ある(前述のように、俺はたまに相手のレベルが分かる)。お前だけでは勝てない。悪魔使いである俺と組め。
断る!

ボス猿め、俺が五千人の頂点に――。


うわあああああ……。

熱い悪魔パバンバが倒される……。
口ほどにもない。頭に来たから処刑時刻を早めるよ。

処刑時刻は9時~♪もうちょっとで僕らは別々の未知♪

ボス宇宙人が、懐メロそうで全然違うものを、すなわち著作権に絡まないものを口ずさみながら去っていく。

今は8時過ぎだから……懐中時計を覗く。

44m12s
うひょー! 文字が心なし大きくなって表示も変わっている!
もがきあがくほどに深みへ嵌まっていく。

早霧のクラッシュもあと44分。

もう一度充実した二人だけの夜を送りたかった……。

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