49日前 二人は別れ、それぞれの道を行く

文字数 1,342文字

悲鳴がたっぷり聞こえたが、生きて戻るとはな。
その言い分だと、俺たちがやられると分かっていたのか?
事情があることもな。話してみろ。
悪魔使いの吉川に、すべてを話す。死神兼業の悪魔により、二人の魂が49日でクラッシュすることも。
シャチクベルクに憑かれたのか……。奴はレベル1000のスーパー悪魔。しかしエースゆえに仕事量が多く、ミスも多いと聞く。
さすが悪魔使いだけあって悪魔界に詳しい。
その失敗を私たちが被るなんて、あんまりです!
隠蔽するために生きたまま地獄へ送られなかっただけ良しと思え。

……お前たちもお困りだが、私も困っている。マンションの頭金、解約できるかな……。

シャチクベルグを倒すと、このしがらみから抜けられるのか?
あの怨霊どころかプブンバさえ倒せぬ者が尋ねるか?

だが教えてやる。何をしようが定まった運命から逃げられぬ。

本来の寿命である30日以上生きられたらラッキーと思え。

そんなこと思えるはずない。でも……俺は30日後に死ぬさだめだった。病死や自殺は考えられない。ならば事故死。この先待ち構えるクラッシュも……。
そんな後ろ向きは考えさせません!

五希君は最後まであがきもがきます。運命を共にした私は、それに付き合うだけです。

俺の心が震えた。
早霧……。
五希君……。
泣きながら抱きあう二人。

吉川も目頭を押さえていた。

泣かせる二人じゃないかい。……お前が胸もとに隠すものを奪って売り払おうと思っていたがやめた。

私が鍛えてやる。お前に異形を倒す力を授けよう。さすれば生き長らえる可能性が増えるかもしれぬ。根拠はないが。

ほんとか! そしたらシャチクベルグを恫喝して、クラッシュまでを無限にしてやる!
高望みするな。修行は20日と長く厳しい。鍛錬を成し遂げたならば、私の手を煩わすことなくここの怨霊を倒してみろ。それでよければ一緒に来い。
もちろん! 単位もバイトも知ったことじゃない。今月は食費を払えないがよろしくお願いします!
私もお願いします!
二人を教えるほど、私は器用じゃない。お前はこいつの帰りを待っていろ。
そんな……。私も五希君と戦いたいのに。
だったら私の出番ですね。
お前は、実力より理論先行型の、教えるのは得意の魔法少女中島。
ドツボリーナを倒した少女だ。
あなたは有明で広岡君に雷を当てて、「早くノルマを済ませたいんだよ」と言って、私から五希君を奪い取った人。

私もあなたのように強くなりたい。よろしくお願いします!

魂のクラッシュを遠ざけるため、愛する二人は離ればなれになる。そんなことで心乱れる二人じゃない。俺たちならば充実した訓練を受けて、強くなり再会するに決まっている……。

早霧は俺を見つめていた。もはや俺たちは目と目で通じ合う。メッセージを受け取る。

では準備があるので一旦戻ります。
反論を与える間もなく、二人は立ち去る。
まずは五希君の部屋に水晶玉を取りに行かないと。
着替えもね。そしたら早霧の部屋に行って、早霧が合宿の準備。遅くなるから、俺は女の子の部屋にお泊り。グヒヒヒ。
もう。五希君が言うと、みんなエロく聞こえる♥
二人はイチャイチャしながら千歳烏山に向かう。


明日から、俺たちは夏しか生きれぬ虫のように一途に魂を燃やす。――今夜からだ。早霧の満足度をせめて75%まで上げてやる!

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