今宵も狩りの刻
文字数 2,187文字
はは、憑りついたとでも? この俺が?
この姿の人間ならば、喰い殺したに決まっているだろ
だったらお前も食ってやる。……見れば見るほどうまそうだ。犯しながら耳朶から喰おう。首から血をすすろう
弱くはなさげでした。逃げ足が速いのは多少は知恵があるから。……新月に襲われたら勝てないかも
なんだ。これくらいで戻ってくるなんて、やっぱ低脳だったね
……さすが師匠っすね。でも、とどめを刺さなかった意図はなんですか?
自分の身は自分で守る。
志乃はその覚悟を持つときが来ました。
無理です! まだ無理! 永遠に無理! ずっと師匠に追いつけるはずないです!
さきほどの妖魔は消滅せずとも深手は負わせました。数十年は地上に戻れないでしょう。その頃には恨みある私も、さすがに生きていないでしょう
まだ何かが潜んでいるとでも?
志乃の霊感はあてになりません。スタスタスタ
見逃されるなんて思ってないだろうな? 臆病者の相手をしに戻ってきてやったぜ
私はお前の精気に惹かれない。私はそんな下等なものを口にしない
お化けと会話したくねーし。その姿のまま切り刻んでやろうか?
こいつは私との契約が完了して人ではなくなった。十年たっぷり色欲に溺れられたのだから後悔はないよな?
だが私は慈悲深い。これから先を永遠に我がしもべとして過ごすのだから、特別にこの女を好きにさせてやる
私が人であった時に誰であったか、どんな快楽に溺れられたか、なにも覚えていない。我が主に魂を捧げた今だけが存在している。
だけど人でなくなったから分かることもある。お前はきっと美味だ。
ためらいもなく、人であったものを地の底に送り込んだな。慈悲なき行為。神を冒涜する所業。
知らないのか? 私たちはそれが許されている。そして貴様らは無慈悲も冒涜も許されない。
ゆえに私を狩るというのか。――弱き人よ、ならば戦おう。敗れれば私の眷属となる。その契約のもとで戦おう
貴様が敗れたら羽虫にもなれずに消滅する。その契約のもとで相手してやる
ほおお……剣の所有を許されていたのか。だが輝きが弱い。私の光をかき消せるか?
私の本当の姿は気に入ってもらえたかな?お前の精気はひと啜りもしないから案ずるな。下僕とするために私の精を授けるだけだ。
年老いた狩りの者は現れないぞ。この血の色の光は、お前らが言う結界だ。外には何も届かない。
殺されるではないのだから、あきらめて剣を降ろせ。お前のなかに私の精をたっぷりと注いであげよう。……あの老いた女は地の底に送るがな
ああ。あの狩りの者は私の面前で息子を傷つけた。報いを与えないとならない。我が下僕となったお前と殺し合いをさせてやる。ははは……
師匠には百歳まで生きてもらう。
私に守るべきものを与えたな。お前は終わりだ
ただのフィギアに戻れたね。もう人を狩る手助けはさせられないよ
……。
また私にも感じられない存在に気を取られていましたね
……まわりの大人は誰も信じない。辛い時間を過ごしたでしょうね。
不幸にもあなたの忌むべき資質は、私よりはるかにあります。……つまり、私より邪を祓う力があるはずですけどね
あなたがいつになっても異形に怯えるだけでは、私は隠居できません
……きっぱりと言いましたね。その言葉を信じましょう。じきに独り立ちしてもらいます
だって師匠を介護するの私以外にいないです。クスクス
……素敵な笑顔ね。それまで生き続けたいのならば、しっかりと鍛錬しなさい。狩りが終わることはないのですから
私は今夜はもう寝ます。じきに介護が必要なお婆さんらしいから
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