二人に最後の試練
文字数 2,232文字
予感はしていた。こんな日がいきなり来る予感はしていた。彼女が別れをいきなり切り出しそうな予感は、いつでもしていた。
妻のことが大好きな僕は問い詰めることもできない。ただ動揺するだけだ。
だって君はうなされていたから。夢で泣いていたから。
夢で僕に謝っていたから。
ちなみに妻は出勤に、けっこう大きめなリュックサックを使っていた。
妻はいつでも想定外だ。
そうは言っても知り合いの知り合いの弁護士に相談することにした。その人は夜遅くても応対してくれた。
パラッパラッパラッ
パラ、パラッ
パラッ
パラッ
あれから妻はギャンブルをやっていない。株もFXもやっていない。
そう言って僕は妻のおなかへと――僕たちのもとに来てくれた命へと挨拶する。
これから僕たちは若くて頼りない親となる。すぐに強くて頼りになる親となる。
妻にも僕にもしばらくずっとハードな日々が続くだろう。でもきっと、大切な人たちと授かるそれは、辛くもきつくもない試練だろう。そうだよね。