8分前 それでも俺は人助けをする
文字数 1,069文字
懐中時計の電卓機能で計算する早霧が興奮しだした。
しかし宇宙人たちのレベルは50前後。
単純計算で5000x50=250000。
俺たちは33+8+85=96。
250000÷96=2604倍……。
先ほどみたいに余程の僥倖がないかぎり、返り討ちに会いそうだ。
最後を共有するためではない。二人の力をひとつにするために手をつなぐ。
ボス宇宙人は笑いながら待ちかまえていた。
宇宙人は高笑いにむせながら去っていく……。
最後まで前向きな早霧……。
なぜ俺は彼女を裏切った!
抱きしめてしまう俺。
俺の胸に顔をうずめる早霧。
28,27,26……
なんという悪趣味だ。懐中時計がカウントダウンを始めた。
ボスが去っていた奥へと駆けていく早霧と、飛んでいくピヨタン……。
でも俺は監禁されていた牢屋へと向かう。
スマホを取りにいくわけではない。
11,10,9……
懐中時計がクラッシュまでを刻んでいく。俺はどんな死に方をするのだろう。
残された時間ですべきことは……、
さきほど立ちションをしていた宇宙人から奪った鍵を牢屋の鍵穴に差しこむ。
5,4,
町田市民が俺を押しのけ牢屋から逃げだす。
宇宙人の犠牲になるのは俺たちだけで充分だ。
どんなクラッシュでも受けいれてやる! でも心残りは早霧と別々で……。
俺は時計を覗く。
11m33s
感慨に浸る時間には全くもって足りない!
俺はスマホを持ち、牢屋をでる。
早霧とピヨタンを追う。
残り十分。
魂を燃やすには程よい時間だ。