98日前 日暮里で人助けしようとする
文字数 1,130文字
二人は日暮里に着く。スイカの残高が怪しくなってきたがチャージすらできない。キャッシングを利用するのも計画的でないので早霧に五千円借りた。バイト代も仕送りも入金されるのは1週間後だ。
まだ98日もあるのに引き寄せられてしまった。彼女を見習わないといけない。
こっちだよ。
懐中時計が導く。これを使っても魂は目減りしないようだ。
警察にしつこく追われて、俺たちは谷中霊園へ逃げ込む羽目になった。
見せてはいけないと、俺の魂が哀願した。
懐中時計に気づくとは、この女はただの人間ではない。早霧の手を握り、墓地の中を駆ける。
目の前に瞬間移動で現れた……。
やはり……。六本木に去った魔法少女のように、懐中時計を見せれば誤解が解けるかも。なのに、まだ魂が見せるなと切願している。ならば。
女の手に護符があった。そこから光が発せられ……。
悪魔のくせに正義……。ならば正魔と呼ぶべきか? 魔も不要だ。つまり、こいつこそ善悪の隙間にいるニッチな存在。
プブンバが俺へと襲いかかる――。
勝てるはずない。俺はやられた振りをする。
……ばれなかった。助かった。
吉川と呼ばれた女が悪魔と立ち去るのを、俺は地に伏す振りをしながら見送る。