第92話 YAMAHA:QY100【13】
文字数 960文字
僕が高校生の頃、架空の〈戦隊もの〉をつくり、その戦隊ものの設定でエチュードを行ったことがあった。
そのとき、主題歌も必要だろう、ということになって、カケがアカペラで歌ったものを僕がギターでコードボイシングして、ちゃんとした曲として完成させた。
それを覚えていたのか、カケが高校卒業後、僕の部屋に遊びに来て、
「るるせちゃん。また僕の歌に伴奏をつけてよ」
と、言ってきた。
「おーけー。良いぜ」
僕は頷くと、カケがへろへろ歌うメロに、コードをつけて、ちゃんとした楽曲にした。
「んじゃ。ユニット結成だな」
僕が言う。
そして、ここに音楽ユニットが結成されたのであった。
「カケはベースだな」
「でも、るるせちゃん。ドラムがいないよ。これじゃ無理だ」
「打ち込みドラムにしよう」
「そいつは良いね!」
とんとん拍子で、決まっていく。
僕らはYAMAHAのQY100という〈シーケンサー〉を買って、ドラムなどを打ち込むことにした。
楽曲ならば僕にはいっぱいあった。
曲には困らない。
僕とカケは、一緒に楽器で遊ぶ仲に、関係性が変化した。
☆
この小説で何度も言及しているが、カケとは部活が同じであるだけでなく、委員会も一緒だった。
視聴覚委員会、という委員会だったのだが、茨城では、県北地区の高校の放送系の委員会が全部集まって、今で言う〈ワークショップ〉を開く、というイベントが、年に一回あった。
なにかの〈コマーシャル動画〉をつくる、という試みが、最後にやる大きな項目で、僕はいつも、企画を具体化させて絵コンテをつくるという、監督になるのが常だった。
それだけでなく、自分が主役として演技し、その上でカメラなどに指示を出すという、芸人が監督になって映画を撮るスタイルにかなり似ていた。
僕は三年間、女子生徒にセーラー服を借りて着て、演技をした。
大好評だった。
ワークショップの行われた県民文化センターは、言い意味でも悪い意味でも、僕の撮った動画に沸いた。
思えば、目立っている僕を、カケは目障りに思っていたのかもしれない。
ユニットを結成したカケと僕は、阿呆な楽器遊びをたくさんした。
だが、この時からすでに、カケは〈成瀬川るるせの首を刈る〉ことを考え、虎視眈々と時期を狙っていたのだろう。
バカな僕が、気付くわけがなかったのだが。
〈了〉
そのとき、主題歌も必要だろう、ということになって、カケがアカペラで歌ったものを僕がギターでコードボイシングして、ちゃんとした曲として完成させた。
それを覚えていたのか、カケが高校卒業後、僕の部屋に遊びに来て、
「るるせちゃん。また僕の歌に伴奏をつけてよ」
と、言ってきた。
「おーけー。良いぜ」
僕は頷くと、カケがへろへろ歌うメロに、コードをつけて、ちゃんとした楽曲にした。
「んじゃ。ユニット結成だな」
僕が言う。
そして、ここに音楽ユニットが結成されたのであった。
「カケはベースだな」
「でも、るるせちゃん。ドラムがいないよ。これじゃ無理だ」
「打ち込みドラムにしよう」
「そいつは良いね!」
とんとん拍子で、決まっていく。
僕らはYAMAHAのQY100という〈シーケンサー〉を買って、ドラムなどを打ち込むことにした。
楽曲ならば僕にはいっぱいあった。
曲には困らない。
僕とカケは、一緒に楽器で遊ぶ仲に、関係性が変化した。
☆
この小説で何度も言及しているが、カケとは部活が同じであるだけでなく、委員会も一緒だった。
視聴覚委員会、という委員会だったのだが、茨城では、県北地区の高校の放送系の委員会が全部集まって、今で言う〈ワークショップ〉を開く、というイベントが、年に一回あった。
なにかの〈コマーシャル動画〉をつくる、という試みが、最後にやる大きな項目で、僕はいつも、企画を具体化させて絵コンテをつくるという、監督になるのが常だった。
それだけでなく、自分が主役として演技し、その上でカメラなどに指示を出すという、芸人が監督になって映画を撮るスタイルにかなり似ていた。
僕は三年間、女子生徒にセーラー服を借りて着て、演技をした。
大好評だった。
ワークショップの行われた県民文化センターは、言い意味でも悪い意味でも、僕の撮った動画に沸いた。
思えば、目立っている僕を、カケは目障りに思っていたのかもしれない。
ユニットを結成したカケと僕は、阿呆な楽器遊びをたくさんした。
だが、この時からすでに、カケは〈成瀬川るるせの首を刈る〉ことを考え、虎視眈々と時期を狙っていたのだろう。
バカな僕が、気付くわけがなかったのだが。
〈了〉