第33話 ミサイル畑でつかまえて【2】
文字数 1,914文字
新宿三丁目に、末廣亭という寄席がある。
サクラオカさんは落語が大好きで、僕はよく末廣亭に呼ばれた。
迎えに行くと、寄席での演目を堪能し、見終えたサクラオカさんが、近くの料亭などで飯を食って酒を飲みながら僕を待っているのである。
酔っ払ったサクラオカさんは、落語の話を僕によく聴かせてれた。
落語は、観ないとダメである。
独特の「間」を感じられなければいけない。
だが、古典落語の場合は、みんな内容を覚えているので、笑う場所は決まっている。
一人だけ違うところで笑うのは落語家の方が戸惑うのでやめておいた方が良い。
なので、本でじっくりと研究することも忘れてはならない。
本筋と逸れるが、今、落語で検索したら、あの伝説の、「大ネタ中の大ネタ」と言われる『地獄八景亡者戯』を今度、演る落語家の方がいるそうだ。
うわぁ、それは観たい!
コロナの中で『地獄八景亡者戯』を演るか、凄いな。
芦屋市で演るそうなのだが、芦屋市に行ったときの話も、僕にはある。
が、話がズレるので軌道修正して、落語の話をもうちょっと。
僕は、落語は、ほぼ艶話しか通用しない。
いや、観ると面白いが、読書として読むなら、艶話が最強だ。
特に好きなのが『四ツ目屋で』なのだが、下品にもほどがあるというもので、でも、聴いて笑う僕も酷い奴だ。
その『四ツ目屋で』は、ハリガタが女性によく売れる、とにかく売れる、という内容の演目だ。
他にもゲラゲラ笑えるのがたくさんあるが、書けないね、ごめん。
さて。
新宿の一丁目で働く前の僕は、サクラオカさんに誘われる前には、新宿にあまり縁がなかった。
だが、イエローサブマリンというカードショップがあり、友人のギンと一緒に、新宿のイエローサブマリンに行くことは結構あった。
東京に住んでいた頃のギンは、一時期、学友たちと『マジック・ザ・ギャザリング』にハマっていた。
使えないカードを僕にもくれて、それでデッキを構築して、一緒にやろうぜ、とのことだったが、僕はカードゲームの良さを理解するには、あまりにその世界のことを知らなすぎた。
ギンから貰ったカードをある日、コーゲツに見せたら、〈ギャザ〉の良さを理解したようで、カードを買いあさって、たまにギンと勝負するようになった。
この二人、本当は仲が良いんじゃねぇか? と思う僕だった。
☆
新宿に新しいライブハウスが出来るので、プレイしてくれ、との話が舞い込んで来たので、僕はベーシストのカケと、うちに当時居候していたドラマーの女性の三人で、そのライブハウスの住所へ向かって歩いた。
びっくりした。
イエローサブマリンが入っている新宿のビルであった。
「え? なに? カードゲーム大会でプレイするのか?」
僕は想い出の場所のひとつに来てしまったので戸惑ったが、ライブハウスは地下にあるらしく、僕らはビルの地下へ階段を下がっていった。
そうしたら今度は、男性のマッチョポールダンサーが踊る店があって、住所がここだった。
「そういうことか……」
独りで納得していた僕だったが、ちょっと違っていて、ポールダンサーの店の隣に、ライブハウスがあるのだった。
「僕もポールダンサーみたく黒いブーメランパンツで演奏したらおひねりをブーメランパンツにねじ込んでくれるかなぁ?」
カケとドラマーにド突かれる僕。
「痛ててててて……」
ド突かれた僕は黙ってライブハウスに入ってリハを行った。
時間が空いたので飯を食おう、ということになった。
ライブをしてくれ、と言ってきたおっちゃんに連れられて末廣亭の近くまで来て、
「お。知ってる場所だ」
と思った僕だったが、連れられて入った場所は、性風俗店の二階の海鮮料理店だった。
「僕が飯を二階で喰っていると、一階ではおっちゃんらが女性を喰っているわけだ!」
またカケとドラムにド突かれる僕。
飯をタダで食わせてもらうのに、確かにその言葉はあんまりだ。
反省する僕。
料理店の店員は海外のひとで、英語が得意なドラムがチケットを渡して、僕らの宣伝をしてくれた。
そんなこんなで飯を食い終え、ライブハウスに戻る。
すると、僕らのプレイを観るために、ポールダンサーのお店の店長が観に来てくれた。
店長はフレディ・マーキュリーをリスペクトしたルックスで、ヒゲにマッチョなボディをしていて、腕組みしながら最後まで演奏を聴いてくれた。
もはやなにがなんだかの一日だったが、新宿と言えば、まずその思い出がある。
繋げようとすると繋がるものである。
まさかイエローサブマリンの想い出がポールダンサー……もとい、ライブの話に繋がっていくとは。
人生とはわからないものである。
〈次回へつづく〉
サクラオカさんは落語が大好きで、僕はよく末廣亭に呼ばれた。
迎えに行くと、寄席での演目を堪能し、見終えたサクラオカさんが、近くの料亭などで飯を食って酒を飲みながら僕を待っているのである。
酔っ払ったサクラオカさんは、落語の話を僕によく聴かせてれた。
落語は、観ないとダメである。
独特の「間」を感じられなければいけない。
だが、古典落語の場合は、みんな内容を覚えているので、笑う場所は決まっている。
一人だけ違うところで笑うのは落語家の方が戸惑うのでやめておいた方が良い。
なので、本でじっくりと研究することも忘れてはならない。
本筋と逸れるが、今、落語で検索したら、あの伝説の、「大ネタ中の大ネタ」と言われる『地獄八景亡者戯』を今度、演る落語家の方がいるそうだ。
うわぁ、それは観たい!
コロナの中で『地獄八景亡者戯』を演るか、凄いな。
芦屋市で演るそうなのだが、芦屋市に行ったときの話も、僕にはある。
が、話がズレるので軌道修正して、落語の話をもうちょっと。
僕は、落語は、ほぼ艶話しか通用しない。
いや、観ると面白いが、読書として読むなら、艶話が最強だ。
特に好きなのが『四ツ目屋で』なのだが、下品にもほどがあるというもので、でも、聴いて笑う僕も酷い奴だ。
その『四ツ目屋で』は、ハリガタが女性によく売れる、とにかく売れる、という内容の演目だ。
他にもゲラゲラ笑えるのがたくさんあるが、書けないね、ごめん。
さて。
新宿の一丁目で働く前の僕は、サクラオカさんに誘われる前には、新宿にあまり縁がなかった。
だが、イエローサブマリンというカードショップがあり、友人のギンと一緒に、新宿のイエローサブマリンに行くことは結構あった。
東京に住んでいた頃のギンは、一時期、学友たちと『マジック・ザ・ギャザリング』にハマっていた。
使えないカードを僕にもくれて、それでデッキを構築して、一緒にやろうぜ、とのことだったが、僕はカードゲームの良さを理解するには、あまりにその世界のことを知らなすぎた。
ギンから貰ったカードをある日、コーゲツに見せたら、〈ギャザ〉の良さを理解したようで、カードを買いあさって、たまにギンと勝負するようになった。
この二人、本当は仲が良いんじゃねぇか? と思う僕だった。
☆
新宿に新しいライブハウスが出来るので、プレイしてくれ、との話が舞い込んで来たので、僕はベーシストのカケと、うちに当時居候していたドラマーの女性の三人で、そのライブハウスの住所へ向かって歩いた。
びっくりした。
イエローサブマリンが入っている新宿のビルであった。
「え? なに? カードゲーム大会でプレイするのか?」
僕は想い出の場所のひとつに来てしまったので戸惑ったが、ライブハウスは地下にあるらしく、僕らはビルの地下へ階段を下がっていった。
そうしたら今度は、男性のマッチョポールダンサーが踊る店があって、住所がここだった。
「そういうことか……」
独りで納得していた僕だったが、ちょっと違っていて、ポールダンサーの店の隣に、ライブハウスがあるのだった。
「僕もポールダンサーみたく黒いブーメランパンツで演奏したらおひねりをブーメランパンツにねじ込んでくれるかなぁ?」
カケとドラマーにド突かれる僕。
「痛ててててて……」
ド突かれた僕は黙ってライブハウスに入ってリハを行った。
時間が空いたので飯を食おう、ということになった。
ライブをしてくれ、と言ってきたおっちゃんに連れられて末廣亭の近くまで来て、
「お。知ってる場所だ」
と思った僕だったが、連れられて入った場所は、性風俗店の二階の海鮮料理店だった。
「僕が飯を二階で喰っていると、一階ではおっちゃんらが女性を喰っているわけだ!」
またカケとドラムにド突かれる僕。
飯をタダで食わせてもらうのに、確かにその言葉はあんまりだ。
反省する僕。
料理店の店員は海外のひとで、英語が得意なドラムがチケットを渡して、僕らの宣伝をしてくれた。
そんなこんなで飯を食い終え、ライブハウスに戻る。
すると、僕らのプレイを観るために、ポールダンサーのお店の店長が観に来てくれた。
店長はフレディ・マーキュリーをリスペクトしたルックスで、ヒゲにマッチョなボディをしていて、腕組みしながら最後まで演奏を聴いてくれた。
もはやなにがなんだかの一日だったが、新宿と言えば、まずその思い出がある。
繋げようとすると繋がるものである。
まさかイエローサブマリンの想い出がポールダンサー……もとい、ライブの話に繋がっていくとは。
人生とはわからないものである。
〈次回へつづく〉