第118話 光について【6】
文字数 1,222文字
下北沢スタジオペンタ。
そのスタジオで、僕、カケ、ドラムの三人はバンド練習を始めることにした。
僕はなにかを覚えるというのが滅法ダメで、何度も曲を演奏しながら、歌詞とギターのコードやリフを覚えるしかなかった。
僕がこんなに物覚えが悪いなんて、自分でもびっくりするくらいであり、それほど僕はなにかを覚えるのが苦手だった。
ペンタの近くには、タトゥーを彫るところがあった。
「僕も彫るか、タトゥー」
と、僕。
そこにカケが、
「るるせちゃん、温泉入れなくなっちゃうよー」
と、言うので、僕は、
「ふむ」
と頷いて、考え直す。
下北沢というのは当時、演劇の街だったが、ヒエラルキーがあった。
いわゆる〈小劇場演劇〉と呼ばれるタイプの演劇をやる劇場が点在したが、駅に近づくほど敷き居が高くて、駅前近くの小屋で舞台を出来る劇団ほど、ヒエラルキーが上位だった。
ハリボーグミを噛んでぐちゃぐちゃさせながら、僕は、演劇部だった頃のことを思い出す。
だが、点と点が結びつかない。
それはすでに、遠い過去だったし、僕にはそのとき、バンドがあった。
バンドに総てを賭けようと思っていた。
僕はリハーサルスタジオで、練習に励む。
☆
「ライブをやらないとならないと思うのよ」
ドラムが、不意にスタジオ内で、休憩中に言う。
「そうだな」
僕は考える。
「バンドメンバー募集の張り紙があるところに、ライブ参加バンド募集、とかの張り紙なかったっけ」
「じゃあ、それで決めるわよ。初陣を」
そんなわけで三人で張り紙を見てみると、吉祥寺シルバーエレファントというライブハウスのライブイベントに参加するバンドを募集していた。
ドラムが電話を、さっそくかける。
バンドのデモテープが必要らしい。
なので、そのイベントの主催者に送るデモテープを録るために、またリハスタに入って、楽器を演奏する僕ら。
☆
「と、いうわけで、一月に吉祥寺シルバーエレファントが決まりました! そしてそしてぇ〜、三月はわたしのコネクションで、原宿ルイードで、ライブです」
ドラムが誇らしげに言う。
「わぁ〜。パチパチパチ」
楽器の手を休め、椅子に座って拍手するカケと僕。
なんかよくわからないが、順調っぽいようにも思える。
僕らも練習に身が入る。
書いていて、ここらへんのくだり、重要ではあるけど、書いていて冗長な気持ちでいっぱいになる。
が、自伝的な小説なので淡々と書く必要がある。
ご容赦願いたい。
付け加えるなら、ここからの展開は、小説として面白くなるかというと、微妙である。
だが、この作品、最後までお付き合いいただけると嬉しい。
小説としては冗長かもしれない、けど、ここから僕らの戦いはその激しさを増していくのだから、なんとも言い難い、不思議な冒険を僕らはしていたのだな、と思うのだ。
要するに、〈言葉では言い表せない〉戦いであった、ということで。
作家なら面白く書けよ、っていうのはもっともだが。
〈次回へつづく〉
そのスタジオで、僕、カケ、ドラムの三人はバンド練習を始めることにした。
僕はなにかを覚えるというのが滅法ダメで、何度も曲を演奏しながら、歌詞とギターのコードやリフを覚えるしかなかった。
僕がこんなに物覚えが悪いなんて、自分でもびっくりするくらいであり、それほど僕はなにかを覚えるのが苦手だった。
ペンタの近くには、タトゥーを彫るところがあった。
「僕も彫るか、タトゥー」
と、僕。
そこにカケが、
「るるせちゃん、温泉入れなくなっちゃうよー」
と、言うので、僕は、
「ふむ」
と頷いて、考え直す。
下北沢というのは当時、演劇の街だったが、ヒエラルキーがあった。
いわゆる〈小劇場演劇〉と呼ばれるタイプの演劇をやる劇場が点在したが、駅に近づくほど敷き居が高くて、駅前近くの小屋で舞台を出来る劇団ほど、ヒエラルキーが上位だった。
ハリボーグミを噛んでぐちゃぐちゃさせながら、僕は、演劇部だった頃のことを思い出す。
だが、点と点が結びつかない。
それはすでに、遠い過去だったし、僕にはそのとき、バンドがあった。
バンドに総てを賭けようと思っていた。
僕はリハーサルスタジオで、練習に励む。
☆
「ライブをやらないとならないと思うのよ」
ドラムが、不意にスタジオ内で、休憩中に言う。
「そうだな」
僕は考える。
「バンドメンバー募集の張り紙があるところに、ライブ参加バンド募集、とかの張り紙なかったっけ」
「じゃあ、それで決めるわよ。初陣を」
そんなわけで三人で張り紙を見てみると、吉祥寺シルバーエレファントというライブハウスのライブイベントに参加するバンドを募集していた。
ドラムが電話を、さっそくかける。
バンドのデモテープが必要らしい。
なので、そのイベントの主催者に送るデモテープを録るために、またリハスタに入って、楽器を演奏する僕ら。
☆
「と、いうわけで、一月に吉祥寺シルバーエレファントが決まりました! そしてそしてぇ〜、三月はわたしのコネクションで、原宿ルイードで、ライブです」
ドラムが誇らしげに言う。
「わぁ〜。パチパチパチ」
楽器の手を休め、椅子に座って拍手するカケと僕。
なんかよくわからないが、順調っぽいようにも思える。
僕らも練習に身が入る。
書いていて、ここらへんのくだり、重要ではあるけど、書いていて冗長な気持ちでいっぱいになる。
が、自伝的な小説なので淡々と書く必要がある。
ご容赦願いたい。
付け加えるなら、ここからの展開は、小説として面白くなるかというと、微妙である。
だが、この作品、最後までお付き合いいただけると嬉しい。
小説としては冗長かもしれない、けど、ここから僕らの戦いはその激しさを増していくのだから、なんとも言い難い、不思議な冒険を僕らはしていたのだな、と思うのだ。
要するに、〈言葉では言い表せない〉戦いであった、ということで。
作家なら面白く書けよ、っていうのはもっともだが。
〈次回へつづく〉