第81話 YAMAHA:QY100【2】

文字数 983文字

 僕はテレビっ子だったので、刺激を求めて、深夜番組の良い視聴者になったのだった。
 トゥナイト2、ギルガメッシュナイト、という情報番組。
 ひとっりごっつ、松ごっつというお笑いコント番組。
 エコエコアザラクなんてドラマも好きだった。
 社会に目を向けていたので、僕は高校時代、社会科の、現代社会の授業を担当する教師と仲が良かった。
 みんなから蜘蛛先生と呼ばれていた彼は、有能な教師だったが、話を聞く奴以外は無視したところがあった。
 テストの範囲が、教科書からではなく、蜘蛛先生が教卓で話すその言葉から、出題される。
 なので、僕は100点だったけど、蜘蛛先生をバカにしきっている生徒が大半だったから、話に聴く耳を持たず、テストはみんなこぞって赤点だった。
 そりゃその気持ちもわかる。
 上述したトゥナイト2などの、社会学のフィールドワークみたいな奴から出題なのだ。
 深夜番組はコアな層しか観ていないので、自分もコアな世界に潜り込まなければ、蜘蛛先生の言いたいことは、わからない仕様になっていたのだった。
 今なら深夜アニメ全盛期だから、愛好家の多い深夜番組であるが、当時は異常な奴らが愛好していたかのように語られる。
 うーん、面白い番組だらけだったのだけどな。
 ちなみに僕は『ネプ投げ』という番組内企画で、素人OLさんにたいぞーという芸人が〈フェニックス〉という開脚技で投げて、ショーツが丸見えになるというのが好きだったが、バッシングを受けて番組が大人しくなってしまったのを機に、深夜番組と手を切ることになる。







「ねー、るるせちゃん。最近、テレビ面白くないよね。なにか楽しい番組、ない?」
 演劇部の部室でカケがそういうものだから、僕はこれしかない、と言わんばかりに、
「やっぱり『ひとりごっつ』だよ!」
 と、答えた。
「それっていつやってるの」
「深夜」
「深夜なんて『ワンダフル』で『すごいよ! マサルさん』観る以外にも、楽しいの、あるのかぁ」
「いや、むしろ夕方やゴールデンタイムより、番組は大半が尖ってて面白いよ」
「へぇ。深夜番組かぁ。ひとりごっつ、観てみるよ!」
「ああ。そうすると良いよ」


 そう、そうして話はオモジャンと呼ばれる麻雀のパロディの話になる。
 それに『笑う犬の生活』の話をしなければ、僕らの高校時代は語れない。

 では、項をあらため語るため、先へ進もう。




〈次回へつづく〉
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成瀬川るるせ:語り手

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