第26話 エブリデイ・アット・ザ・バスストップ【2】

文字数 1,285文字

 政治家はプロレスラーと似ている。
 レスラーと政治家は似ていないが、プロレスラー、特に男子プロレスは政治家と似ている。
 高校二年三年と、一緒のクラスだった政治家の息子・シガくんは、プロレス大好き高校生だった。
 中学生時代、やはり政治家の息子と知り合いだったが、奴は定規にセロハンテープで画鋲を貼り付けて、それで僕をぶん殴ってくるのを趣味としていた。
 高校時代で出会った政治家の息子・シガくんは、高校卒業後、飲み屋で僕が吐くまでお酒を飲ませて、吐いた僕をゲラゲラ笑うのが趣味だった。
 どちらも悪趣味である。
 ただ、プロレスと政治家の共通点を見いだしていたことには、僕は彼に一目置いていた。
 シガくんという奴は、遠くにある地方自治体から長距離電話してきて、
「悪ぃ、そっちから電話かけ直してくれ」
 と言って電話を切り、僕がかけると四時間以上一方的に言いたいことを喋って、電話を切る。
 それが繰り返される。
 だから、月の携帯電話代が十万円を超えることがあり、その借金を返済するのに、僕は数年間かかった。
 演劇部の部長も同じ手口でシガくんと同時期に、僕に借金を背負わせたので、こいつらは「グル」だったのだと思う。
 とにかく、借金を返済するのに苦労した。

 前にこの小説で書いた、生徒会役員演説だが、次期生徒会長の男がプロレスラーを模した口調で演説を打ったのは、どう考えても、そのシガくんの差し金だった。
 その時の現生徒会長だった女性の方は、僕と三年間、一緒のクラスだったが、この会長、校則では髪を染めちゃダメなのに、あきらかに髪の毛を染めていた。
 高校三年の時に僕と付き合っていた女の子は地毛が栗毛色でロングの髪が美しかったのに、他の女子から「あんた、髪の毛染めているでしょう!」と因縁を付けられ、髪の毛の色の証明書を医者から貰って持っていくはめになった。
 だからか、その子は会長を嫌っていたし、何故か僕と会長が昔付き合っていたかのようなことを、別れる前はしきりに口走って怒っていることが多かった。
 この、同じクラスの生徒会長は、付き合う男のタイプが生徒会長というイメージと裏腹だった。
 不良少年たちと仲良くし、一緒に行動することが多かった。
 例えば、ひとから貸してもらったCDを中古屋に売り払ってお金に換えて活動資金にしていたミュージシャンや、卒業後、ヤクザの組事務所に入ることが決まった暴力生徒などが、生徒会長の男性の友人関係であった。
 生徒会長の友人だった、と自分は自分を少しだけ思うが、流石に僕はそこまで悪い人ではないので、良いタイプの友人だったと思っている。
 他校の生徒とお付き合いしていたみたいだが、そいつも、
「またおれとキスしようぜ!」
 とか、僕の前で誇らしげに会長に言っていたので、僕以外では、悪い男としか付き合わないタイプだったのだろう。


 気づけばいろんな奴がいた。
 友達、あまりいない人生だったと思っていたけど、僕は、良い奴か悪い奴かは別として、楽しい奴らに、ガッコウでも囲まれていたのではなかろうか。
 今、書いていて考えを新たにするのであった。





〈次回へつづく〉
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成瀬川るるせ:語り手

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