第21話 因果交流電燈グレイテストヒッツ【1】
文字数 1,228文字
僕は中学生の頃、詩を書いていた。
その多くは歌詞だったが、自由詩を書くこともあった。
僕が生まれて初めて作曲をしたのは、中学二年生のときだ。
その曲は高校一年生の冬、弾き語りした音源テープにしてヤマハミュージッククエストに送るが、当たり前だが一次審査落ちだった。
その時のミュージッククエストで賞を獲った一人が、椎名林檎だった。
放送室。
高校一年生の僕が購買部で買った雪印コーヒーと焼きそばパンを食べていると、当時の視聴覚委員長の女性は、
「うーん。るるせくんはね、わたしだったらきっと本当の意味でえろく出来る。今の君は、本当のえろさを知らない。えろいうたはつくれない」
と、顎に手をあて、パイプ椅子に座り、足を組みながら言う。
「はい?」
意味がわからず、目を泳がす僕。
委員長はパイプ椅子から立ち上がり、腰に手をやって、もう片方の手で僕を指さす。
「るるせくん、わたしとセックスするのよ!」
「…………はい?」
「ほら、だから。〈通してない〉からえろくないのよ。一回〈通して〉みれば、きっとえろくなる! 間違いない!」
「通すって、なにを、ですか」
「ナニをナニに〈通す〉のよ! バカね!」
「うぅ……」
さらに目を泳がし、言葉に窮する僕。
委員長はため息を吐いて、椅子にどさっと、座り直す。
両手をパイプ椅子の後ろに回して、ぶらぶらさせて、顔を宙に向けて、放心したような口調で言う。
ぱんつは丸見えだ。
だが、気にする様子もない。
「あぁ、もう。こんなの悩むことじゃないのだけどなぁ。タダでやれるって言うのだから、食いついた方がいいよ。そういうところが〈通ってない〉って言うのよー」
で、上に向けていた顔をまっすぐに、僕に向け直す。
「よし! じゃあ、お姉さんが処女を失ったときの話をしましょう! きっとしたくなる!」
もはやなにを言っているのだ、このひとは、って感じだったが、僕は委員長がロストヴァージンするときの話を聞くことになった。
まるでライトノベルのなり損ないみたいなエピソードだが、事実であるのだから、仕方がない。
放送で流している「お昼の音楽放送」より、委員長の話を流した方がウケたのではないか、と思うが、そういうわけにはいかないのである。
僕を信頼してくれたから、えっちな話をしてくれたのだと思う。
焼きそばパンをかじりながら、僕はいろんなえっちな話を毎日、昼休みに聞くために、放送室に通うことになったのであった。
それは、大変勉強になる話だったが、それが創作に活かせてきたか、というと、振り返ると、どうだかわからない。
委員長は美少女だったし、惣菜パンを食べながらその美少女の口から毎日一時間、えっちな体験談を聴ける僕は、ラッキーだったが、例えば、それをここに直接的に書けるかというと、もうすでに書ける時代は過ぎていて、大人しいのが、今の時流に沿った小説のような気がする。
時流さえ合っていれば、僕はきっと〈愛より速く〉走れたのに。
〈次回へつづく〉
その多くは歌詞だったが、自由詩を書くこともあった。
僕が生まれて初めて作曲をしたのは、中学二年生のときだ。
その曲は高校一年生の冬、弾き語りした音源テープにしてヤマハミュージッククエストに送るが、当たり前だが一次審査落ちだった。
その時のミュージッククエストで賞を獲った一人が、椎名林檎だった。
放送室。
高校一年生の僕が購買部で買った雪印コーヒーと焼きそばパンを食べていると、当時の視聴覚委員長の女性は、
「うーん。るるせくんはね、わたしだったらきっと本当の意味でえろく出来る。今の君は、本当のえろさを知らない。えろいうたはつくれない」
と、顎に手をあて、パイプ椅子に座り、足を組みながら言う。
「はい?」
意味がわからず、目を泳がす僕。
委員長はパイプ椅子から立ち上がり、腰に手をやって、もう片方の手で僕を指さす。
「るるせくん、わたしとセックスするのよ!」
「…………はい?」
「ほら、だから。〈通してない〉からえろくないのよ。一回〈通して〉みれば、きっとえろくなる! 間違いない!」
「通すって、なにを、ですか」
「ナニをナニに〈通す〉のよ! バカね!」
「うぅ……」
さらに目を泳がし、言葉に窮する僕。
委員長はため息を吐いて、椅子にどさっと、座り直す。
両手をパイプ椅子の後ろに回して、ぶらぶらさせて、顔を宙に向けて、放心したような口調で言う。
ぱんつは丸見えだ。
だが、気にする様子もない。
「あぁ、もう。こんなの悩むことじゃないのだけどなぁ。タダでやれるって言うのだから、食いついた方がいいよ。そういうところが〈通ってない〉って言うのよー」
で、上に向けていた顔をまっすぐに、僕に向け直す。
「よし! じゃあ、お姉さんが処女を失ったときの話をしましょう! きっとしたくなる!」
もはやなにを言っているのだ、このひとは、って感じだったが、僕は委員長がロストヴァージンするときの話を聞くことになった。
まるでライトノベルのなり損ないみたいなエピソードだが、事実であるのだから、仕方がない。
放送で流している「お昼の音楽放送」より、委員長の話を流した方がウケたのではないか、と思うが、そういうわけにはいかないのである。
僕を信頼してくれたから、えっちな話をしてくれたのだと思う。
焼きそばパンをかじりながら、僕はいろんなえっちな話を毎日、昼休みに聞くために、放送室に通うことになったのであった。
それは、大変勉強になる話だったが、それが創作に活かせてきたか、というと、振り返ると、どうだかわからない。
委員長は美少女だったし、惣菜パンを食べながらその美少女の口から毎日一時間、えっちな体験談を聴ける僕は、ラッキーだったが、例えば、それをここに直接的に書けるかというと、もうすでに書ける時代は過ぎていて、大人しいのが、今の時流に沿った小説のような気がする。
時流さえ合っていれば、僕はきっと〈愛より速く〉走れたのに。
〈次回へつづく〉