第94話 ミッドナイト・ストリートパフォーマンス【1】

文字数 834文字

 児童劇団の団長・カズコさんがソフトパックから煙草を取り出し、口にくわえる。
 僕は自分のポケットからZIPPOライターを取り出し、点火する。
 その火で、カズコさんは煙草に火をつける。
 カズコさんは、今はおばちゃんだが、宝塚を目指していた過去があり、凛とすれば凛とする、新進気鋭の児童劇団を率いる団長だった。
 今にも壊れそうなアパートに住みながら、子供たちを中心に、ダンスと演技指導をしていた。
 もちろん、それでは食べていけないので、コンビニのバイトをしながら、だ。







 僕はカズコさんの劇団の雑用係をやっていた。
 僕はロリコンなので、
「小学生の面倒を見るの、これ一体なんの拷問だよ!?」
 と、本気でうめくほどだったが、まあ、当たり前だが、僕が子供にモテるはずがなかったので、その点では安心だった。
 カズコ団長は演劇に力を入れたかったみたいだが、子供たちはみんな、教えてもらうダンスに夢中だった。
 そりゃそうだろう。
 再びアイドルブームが起こり、その頃からアイドルは歌というよりもダンスパフォーマンスに力をいれているのだから。
 そのアイドルグループなどに憧れるお年ごろの子供たちだ、ダンスに一生懸命である。
 高校卒業後、何故かそのカズコ団長のお手伝いをすることになった僕。
 この劇団が教えるダンスは好評で、踊る子供たちのダンスのレベルはとてもハイレベルだった。
 なので、町でやっている「さくらまつり」という大きなお祭りで、ダンスパフォーマンスをするのだが、それも大盛況であった。
 トレーラーを借りてきて、トレーラーが開くとダンサーの子供たちが登場。
 踊って話題を攫って、撤収する、というかなりクールな出退場の仕方をする。
 団長も、その頃は弱小団体の首領だったが、今はここらの地方では大御所の団長になっている、とも聞く。

 まあ、そんな団長と、その劇団の下積み時代に僕は雑用係としてお手伝いをしていたのであったのだ。
 そうだな、少しだけ、この劇団の話もしよう。




〈次回へつづく〉
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成瀬川るるせ:語り手

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