第23話 因果交流電燈グレイテストヒッツ【3】

文字数 1,388文字

 この小説は、学生時代を中心に書いている私小説なのだけど、書けば書くほどに「僕は、全く勉強をしていなかったなぁ」と思う。
 僕は本当に勉強をしなかった、一秒も。
 僕は学生時代、勉強をしなかったので、あとで勉強をするとなったとき、大変だった。
 本当に大変だった。
 結局、二十代半ばから、ずーっと、誰とも関わり合わないで仕事から帰ってから勉強をすることになって、でも、子供の頃と吸収率は違うから、なかなか頭に入らない。
 そんなこんなで人生をダメにしてしまい、僕は今では生きる屍になってしまったのでしたとさ。
 若い人がこれを読んでいたら「勉強を若いときにしておけ」と、言っておきたい。
 僕は一秒たりとも勉強をしなかった。
 後悔があるとしたら、それだなーって。







 高校一年生のときは勉強をしようとはしていた。
 だから、課外授業を受けることにした。
 国語に至っては、生徒は僕一人だけの課外授業だった。
 国語の先生は、若い女性教師だった。
 その教師は、宮沢賢治の大ファンだった。
 僕はそれまでお手本なしに詩を書いていたが、そこで詩の書き方を宮沢賢治によって知ることになる。
 また、僕は中学生時代、台本を書く機会があったし、それに小説もどきも小学生の頃にかなり書いていたことがあったので、宮沢賢治の創作法や、書いた経緯については、思うところがあった。
 宮沢賢治と言えば〈羅須地人協会〉という塾を開いて、そこで語り聴かせるために童話を書いていたことで有名だ。
 むしろ、今伝わっている宮沢賢治の小説のほとんどは、その羅須地人協会のために書き下ろされたものだ。
 プロの作家を目指すとか、そういう地位や名誉やお金とは違うロジックで、宮沢賢治は小説を書いた。

 授業じゃない話題になるとかなり宮沢賢治の話になってしまうこの課外授業で、僕は〈創作スタンス〉という、大事なものについて、宮沢賢治を巡って、考えさせられることとなった。
 ありがとう、先生!
 誰もいない、二人っきりの放課後の教室で、しかもおでことおでこがぶつかるのじゃないか、くらいの至近距離でした会話が、僕の糧となったよ!
 性癖も芽生えた気がするし!
 ありがとう、先生!
 ……と、いうことなのであった。
 ガッコウの勉強が出来るようになったよりも、むしろ女性教師という性癖について考えることになったことの方が、有意義だった気さえする。
 いや、僕はなに書いているのだ?
 まあ、そういうことなのである。


 蛇足だが、東京暮らしのある日、国立市のギンの部屋に行ったら、大量の女教師のアダルトビデオがあって、
「おまえにそんな性癖があったのかッ?」
 と、驚いて、次いで京王堀之内のコーゲツの部屋に遊びに行ったら、女教師えろ漫画が大量にあって、
「おまえもかよっ!」
 と、ツッコミを入れた。
この二人に共通点、しかも僕には予想が付かなかったものがあって、性癖ってわからないものなのだな、と考えさせられた。
いや、本当に蛇足だった。
ごめん、ごめん。


 紙数の関係で今回はこうして中途半端なところで区切るが、〈創作スタンス〉というものについて考えることになったのは、中学生の頃にしていた創作とは、一線を画す出来事であった。
 今回は、それが言いたかったし、それは国語の課外授業のおかげだ、ということなのである。
 繰り返すが、勉強は若いときにしておくと良いよ!





〈次回へつづく〉
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成瀬川るるせ:語り手

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