第85話 YAMAHA:QY100【6】
文字数 1,215文字
〈面雀〉(おもじゃん、と読む)とは、四人で麻雀卓を囲み、各々に配牌された四つの牌に書かれた〈言葉〉の順番を入れ替えて、面白いワンセンテンスの文章をつくって、面白さを競う遊びである。
深夜テレビ番組『ひとりごっつ』及び『松ごっつ』で放送されていたコーナーであり、参加者は芸人以外にも奥田民生さんや秋元康さんなどがいた。
僕が夜な夜な詩を書いているのなんて〈面雀〉と、ある意味では全く変わらないし、みんなで囲んでそういう言葉遊びをするのが、とても楽しそうだった。
思えば、本家本元の麻雀自体も、僕にはわからなかったが、やっているひとたちを見ると、いつもとても楽しそうだ。
楽しいだけではなく、洗牌(しーぱい、と読むのじゃぞ)の、かき混ぜる音が神聖らしくて、大陸では葬式のときに麻雀をやるらしい。
レートを限りなく低くして賭け事をするのは、禁止されているけど、現場を見たことが何度かあったような気がする。
僕が子供の頃は、脱衣麻雀というのもあった。
脱衣麻雀とは、「負けたら脱ぐ」の元祖であろう。
いや、野球拳や王様ゲームの脱衣とどちらが早いのか、そこは僕には不明だが。
身近にある大人の遊びの代表格が麻雀であり、若干知ってはいる、という感じ。
それが僕の麻雀の認識だ。
☆
こう、頭の中で〈面雀〉から派生した諸々を考えて愉快な気持ちになっていると、不意に、ぐるぐるに丸めたファッション雑誌で頭をぶん殴られた。
ハッと気付く。
僕はカラオケボックスのバイト中だった。
楽しい諸々は高校時代のことで、それは過ぎ去り、僕は上京するためにお金を貯めているさいちゅうなのであった。
僕を叩いた店長の嫁さんが監視カメラのモニタを指さす。
「客が口でしてる。早く止めて来い、るるせ。店内で性行為は禁止だ」
「えぇ、僕が止めに入るのですかぁ?」
「おまえ以外に誰が行くんだよ。おてぃむてぃむをけっ飛ばしていいからさ。さあ、行ってきな、るるせ!」
「へーい」
ヤンキー座りからだるい身体を起こし、口でしている、というカップルを摘発に向かう僕。
そんな仕事ばかりだった。
僕は下っ端なので、女子トイレの清掃もしていたし、汚物入れの処理もしていた。
女性の店員が、店長の嫁さんしかいなかったのだから、男性の誰かが受け持つしかない。
よって、消去法があり、必然的に僕の請け負う係が、汚物入れ処理などになった。
カラオケボックスの仕事は、僕が望んでしている仕事であり、文句は言えない。
なかなかに世知辛い感じだったのであった。
「これ、本当に上京するためのお金、貯まるのかなぁ?」
疑問だ、大いに疑問だ。
不安だ。
不安しかなかった。
友人のギンも、次いでコーゲツも、上京したり上京することが決まったりしていた時期だったので、不安は募ったが、哀しいことに僕はカラオケボックスの女子トイレで生理用ナプキンの処理をする毎日を過ごすことしかできないのであった。
〈次回へつづく〉
深夜テレビ番組『ひとりごっつ』及び『松ごっつ』で放送されていたコーナーであり、参加者は芸人以外にも奥田民生さんや秋元康さんなどがいた。
僕が夜な夜な詩を書いているのなんて〈面雀〉と、ある意味では全く変わらないし、みんなで囲んでそういう言葉遊びをするのが、とても楽しそうだった。
思えば、本家本元の麻雀自体も、僕にはわからなかったが、やっているひとたちを見ると、いつもとても楽しそうだ。
楽しいだけではなく、洗牌(しーぱい、と読むのじゃぞ)の、かき混ぜる音が神聖らしくて、大陸では葬式のときに麻雀をやるらしい。
レートを限りなく低くして賭け事をするのは、禁止されているけど、現場を見たことが何度かあったような気がする。
僕が子供の頃は、脱衣麻雀というのもあった。
脱衣麻雀とは、「負けたら脱ぐ」の元祖であろう。
いや、野球拳や王様ゲームの脱衣とどちらが早いのか、そこは僕には不明だが。
身近にある大人の遊びの代表格が麻雀であり、若干知ってはいる、という感じ。
それが僕の麻雀の認識だ。
☆
こう、頭の中で〈面雀〉から派生した諸々を考えて愉快な気持ちになっていると、不意に、ぐるぐるに丸めたファッション雑誌で頭をぶん殴られた。
ハッと気付く。
僕はカラオケボックスのバイト中だった。
楽しい諸々は高校時代のことで、それは過ぎ去り、僕は上京するためにお金を貯めているさいちゅうなのであった。
僕を叩いた店長の嫁さんが監視カメラのモニタを指さす。
「客が口でしてる。早く止めて来い、るるせ。店内で性行為は禁止だ」
「えぇ、僕が止めに入るのですかぁ?」
「おまえ以外に誰が行くんだよ。おてぃむてぃむをけっ飛ばしていいからさ。さあ、行ってきな、るるせ!」
「へーい」
ヤンキー座りからだるい身体を起こし、口でしている、というカップルを摘発に向かう僕。
そんな仕事ばかりだった。
僕は下っ端なので、女子トイレの清掃もしていたし、汚物入れの処理もしていた。
女性の店員が、店長の嫁さんしかいなかったのだから、男性の誰かが受け持つしかない。
よって、消去法があり、必然的に僕の請け負う係が、汚物入れ処理などになった。
カラオケボックスの仕事は、僕が望んでしている仕事であり、文句は言えない。
なかなかに世知辛い感じだったのであった。
「これ、本当に上京するためのお金、貯まるのかなぁ?」
疑問だ、大いに疑問だ。
不安だ。
不安しかなかった。
友人のギンも、次いでコーゲツも、上京したり上京することが決まったりしていた時期だったので、不安は募ったが、哀しいことに僕はカラオケボックスの女子トイレで生理用ナプキンの処理をする毎日を過ごすことしかできないのであった。
〈次回へつづく〉