第8章 終焉 -  病院へ(6)

文字数 407文字

 病院へ(6)
 


 開いた扉から半身を乗り出し、振り向く未来に精一杯の笑顔を向ける。その瞬間、未来は既に淳一の前を通り過ぎていて、振り返った途端目を見開き、暫し大口を開けて硬直する。満面の笑みを浮かべ、淳一がそこにいる意味が理解できないのだ。しかしそれでも、その笑顔に吸い寄せられていくように、未来はゆっくり彼の横に並び立つ。どうしたの……? 口元だけがそう動き、息をしないままだから声にもならない。そんな驚きの顔を覗かせる未来に、両親が我先に走り寄ろうとした時だった。
「瞬が! 目を覚ましたの!」
 一瞬の笑顔と共にそう言って、未来は再び瞬の病室へと走っていく。 
 淳一が慌ててその後を追い掛け、未来の両親、景子や医師らもすぐに続いた。そして瞬の病室に全員が揃って、未来はあまりに嬉しそうな声を出す。
「瞬が、目を覚ましたの!」 
 そう言って、更に瞬へと声を掛けた。
「瞬! みんなここにいる! 集まってくれてるよ! 」
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