第5章  探求 - 新幹線(3)

文字数 1,221文字

                   新幹線(3)

※ 二階堂京は、山陰地方有数の名家、二階堂家の長男、二階堂恭司と、当時カフェの女給をしていた豊子(出生は現在のところ不明。結婚で二階堂家へ戸籍編入。夫恭司の死後転出)との間に生まれる。2人は周囲の猛反対を押し切り結婚。長男、京誕生から4年後、恭司が結核の為死亡。その後7年間、豊子と京の消息は不明で、昭和27年に再び出雲市に転入後、豊子は宗教団体〝勾玉教〟を設立、現在に至る。一方二階堂京は、昭和33年に高校を中退。その後4年間勾玉教を手伝っていたが、昭和37年に出雲市を転出。その後現在に至るまで都内7箇所を転々とし、平成12年より現住所となる。職業については不明。ただ20年くらい前までは、占い師をしていたという情報あり(未確認)

 ――占い師なんだ……。
 そう言われてみれば、そんな風貌だったと、未来は改めて男の顔を思い浮かべる。
 添付ファイル1ページ目は大凡こんな感じで、未来はチラッとだけ瞬に視線を向けてから、次のページへスクロールしていく。そこには京が移り住んできた住所の羅列や、資産内訳などが細かな文字で並んでいた。そして読み進むうちに、2人の視線がある一点でピタッと止まる。矢島不動産。そう書かれたところで顔を見合わせ、やはり同時に次の文章に目を向けた。
 
 ※※薬品工業㈱所有 ※※※※㎡の土地―詳細(1)を昭和60年に矢島不動産が購入。平成11年完成のマンション最上階一物件を二階堂京が購入した際、売り出し価格―詳細(2)二億四千万円だったにも関わらず、二階堂京が矢島不動産へと支払った金額は、一千万程度だったと思われる。矢島不動産グループのトップ、矢島英二は先月死亡しており、2人の関係については現在のところ調査中ではあるが、都内住所変更履歴7箇所のうち、6箇所までが矢島不動産所有の物件であることから、かなり深い関係性を疑うことができる……。
 
 ふうっと大きな溜め息が出て、未来は再び報告書最後に書かれた文章へ目を向けた。
 そこには以前、矢島英二本人から同様の調査依頼があったこと、更に急ぎであることを優先させた結果、そこで得た情報の一部が流用されているとあった。きっと一部どころじゃないのだ。どう考えても半日やそこらで、ここまでのことが判明してしまう筈がない。ただとにかく、新幹線が静岡駅を通過する頃には、2人の目的地は米子ではなくなった。米子から更に1時間近く先にある、瞬の母康江の生まれ故郷である出雲市へと変わったのだ。江戸景子から始まった関わりが、その母親聡子から薬品工場跡へと続き、矢島英二、矢島不動産からマンションの男、そして更には、瞬の母親とも関係してくるのだろうか? ただ実際、瞬が発見されたという場所は、出雲市から車で1時間と離れていない。
「なんだか、どんどん繋がっていくね……怖いくらいに……」
 窓際に座る瞬の方に顔を向け、未来は囁くようにそう言った。
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