第8章 終焉 -  終わり(3)

文字数 349文字

 終わり(3)



「未来を連れて帰るのは、もう暫く待たなければならなくなったよ……」

 険しい顔付きのままそう言うと、徐に、彼は優子と未来の間に割って入る。
 後ずさる優子の前で、未来の顔を見つめながら膝を突き、視線の位置までしゃがみ込んだ。
 そんな彼の行動に、優子は眉間に皺を寄せ、それでも黙って見守るしかない。
 ところがそれから、慎二は暫く何も言おうとしなかった。
 それどころか見る見る顔を歪ませ、気付けばその目に涙まで湛えている。
 その涙に気付いた優子が、不安そうに一言だけ呟いたのだ。
「あなた……」
 ――どうしたの? 
 そう続けようとしたその瞬間、慎二が優子に顔を向け、力強い頷きをして見せる。
 そして再び未来へと向いて、ポロポロ涙を流して言ったのだった。

「瞬くんが、たった今、目を覚ましたよ……」
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