第5章  探求 - 岡山、そして松江(6)

文字数 549文字

             岡山、そして松江(6)


冗談じゃない……。冗談じゃないわよ! 
なに勝手なこと言ってるの? 
どうして急にそんなことを言い始めるのよ! 
今更そんなこと言ってくるんなら、なんでわたしのところに現れたりしたの? 
冗談じゃないわ! やってられないわよ! 
現れないでよ! 
なんで現れたのよ! 
あなたが現れなければ、今頃わたしだって誰かと幸せに暮らしてる! 
なのに! 
なのに! なのに!
20年も経ってからそんなことを言うなんて、最低じゃない! ひど過ぎるわよ! 
どうせならもっと前に、
わたしがまだ若かった頃に、
どうしてそう言ってくれなかったの? 
ホントに、いったいどういうことなのよ!?  
    
 未来は声にすることも忘れて 涌き上がる感情にただ身を任せていた。そして次に浮かび上がった思念によって、ようやく未来は声にするのだ。
「ちょっと待ちなさいよ!! そのまま行っちゃうなんてひど過ぎるじゃない! わたしの答えを聞くくらいのことができないの? そのくらい、そのくらいしてくれたっていいじゃない!」
 そんなことを叫びながらも、さっき浮かび上がった思念は消え去らない。
 ――いっそのこと、死んでくれてたら、忘れることだってできたのに……。
 いつまでも、未来の脳裏にそんな思念が木霊した。
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