車胤   蛍の光が導く先

文字数 799文字

車胤(しゃいん)の父は南平(なんへい)郡の一役人。

車胤パパのボスであった王胡之(おうこし)は、
司馬無忌(しばむき)と言う東晋宗族に
命を狙われていたため、
治所を酆陰(れいいん)の地に疎開させていた。

ちなみに司馬無忌は王敦(おうとん)の乱に際して
父を王胡之の父に殺されている。
世代の渡った恨みの連鎖は恐ろしい。

さておき、この疎開先で王胡之、
時折、垣根越しに車胤を見かけていた。

この時車胤は十数歳。
貧しい中、蛍の光を明り代わりとして
勉強に勤しむほどの勤勉ぶりだった。

人を見る目には定評のある王胡之、
何あの子やばない? と思っていた。

なので車胤パパに言う。

「あの子は、きっと後世に名を残すぞ」

その後宴会があれば車胤を呼び寄せ、
かれの人脈作りのサポートをした。

そんな車胤、成長すると、
何と桓温(かんおん)さまのお眼鏡にとまる。

人材が沢山いる中、
ひときわ優れた人物として、
東晋宮中の人事系の事務官にまで
抜擢されるのだった。



車胤父作南平郡功曹。太守王胡之避司馬無忌之難、置郡于酆陰。是時、胤十餘歲、胡之每出、嘗於籬中見而異焉。謂胤父曰:「此兒當致高名。」後遊集、恆命之胤。長又為桓宣武所知、清通於多士之世、官至選曹尚書。

車胤の父は南平郡の功曹と作さる。太守の王胡之は司馬無忌の難を避け、郡を酆陰に置く。是の時、胤は十餘歲たり。胡之は出る每、嘗て籬中にて見て異とす。胤の父に謂いて曰く「此の兒は當に高名を致すべし」と。後に遊集せるに、恆に之れを命ず。胤の長ぜるに、又た桓宣武の知れる所と為る。多士の世にても清通し、官は選曹尚書に至る。

(識鑒27)



「蛍の光、窓の雪」の車胤さんは、ここではその悲劇的な最期については触れられていないんですよね。このひとが生きていたら徐広とか鄭鮮之みたいなポストにつけただろうになあ。人の運命ってのは本当に一寸先が闇。

なお窓の雪のほう、孫康さんについては本当に蒙求にしか残っていません。この人の載ってる『孫氏世録』がうまくみっかればいいんですが、まぁ難しいんでしょうね。
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