王衍6  裴頠さんのこと

文字数 647文字

裴頠(はいぎ)と言えば、その論談の腕前が
抜群なことで有名だった。
何せあの王衍(おうえん)さんを向こうに回して
一歩も引かないほどである。

なので人々は、裴頠のことを
「果て無き言談の森林」と呼んでいた。

そんな裴頠さんについてのことだ。


王衍と初めて会った時のことである。

王衍は裴頠より4つ年上。
多くの名士たちが一堂に会する中で、
彼らが一様に言っていた。

「裴頠なんぞ大したことないぜ!」

そこで王衍も、裴頠に対しては
「ねぇ、君」くらいの感じで
なれなれしく話しかけた。

すると裴頠、すんとして、言う。

「あなた様が懐かれる思いのまま、
 振る舞われるべきでありましょう」

素晴らしい皮肉である。
そういや王衍さん、あなた庾敳(ゆがい)
「卿呼ばわりすんな」って
むくれてましたよね……



裴僕射時人謂為言談之林藪。
裴僕射を時の人は「言談の林藪」と謂いたるを為す。
(賞譽18)

王夷甫長裴成公四歲,不與相知。時共集一處,皆當時名士,謂王曰:「裴令令望何足計!」王便卿裴。裴曰:「自可全君雅志。」
王夷甫は裴成公に長ずること四歲、與に相い知らず。時にして共に一なる處に集いたれば、皆な當時の名士にして、王に謂いて曰く:「裴令が令望、何ぞ計るに足らんか!」と。王は便ち裴に卿す。裴は曰く:「自ら君が雅志を全うすべし」と。
(雅量12)



裴頠は後に司馬倫の反乱に巻き込まれ賈南風とともに朝廷の露となり、王衍は後に司馬越の配下として逃げ延びる中石勒に殺され。どちらも終わりをよくこそしていないものの、とは言えやはり裴頠の評価のほうがどうしても高くなるわけですね。わかります。
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