袁宏1  東陽遥かなり

文字数 1,041文字

桓温幕僚 袁宏(えんこう)
既出:曹操12、孝武1、桓温9
   桓温11、桓温44、桓温57
   桓温59、謝安16、司馬越3
   陶侃2、郗超4、郗超6、
   郗超11、謝尚1


袁宏さんが会稽(かいけい)謝氏の名士、謝奉(しゃほう)
副官として出向することになった。

袁宏さんを見送るため、
建康(けんこう)の多くの人が瀨鄉(せきょう)に集う。

まさに出立と言うその時、
袁宏さんは哀しそうな顔を浮かべ、
嘆息しながら言った。

「山河はどこまでも果てしなく、
 まさに万里の果てに赴く心持ちだ」



袁彥伯為謝安南司馬,都下諸人送至瀨鄉。將別,既自悽惘,歎曰:「江山遼落,居然有萬里之勢。」

袁彥伯は謝安南が司馬と為り、都下の諸人は送りて瀨鄉に至る。將に別れなんとせるに、既にして自ら悽惘たれば、歎じて曰く:「江山は遼落し、居然なること萬里の勢に有り」と。

(言語83)



えっもしかして袁宏さんって文人なの!?

と言う冗談(半ば本気)はさておき、袁宏さんについて、劉孝標(りゅうこうひょう)の残してくれた注が最高だったのでこちらも一緒にやっておきましょう。しかし例によって本文より長いとかお前。


謝安(しゃあん)さまは袁宏さんの当意即妙ぶりを激賞していた。人事部長とその部下と言う間柄であった二人だが、袁宏が謝奉の副官として東陽(とうよう)に出向する日が来ると、送別の宴を開催する。
ここに多くの名士たちが集結。なので謝安さま、突然袁宏さんを試してみようと思いつく。その手を取って別れの挨拶を述べたところで、側仕えに一本の扇をもたせ、袁宏に渡した。
すると袁宏は速やかに応答する。
「それでは、この扇でもって公の仁徳を世に扇ぎ送り出し、人々を慰めると致しましょう」
その速やかに機転の利いたコメントを提示するさまに、同席した者たちは感嘆の声を上げた。
その性格があまりにも素直であったため、どうしても高官にまではのぼりつめられなかった。東陽郡での在官中に死んだ。

太傅謝安賞宏機捷辯速,自吏部郎出為東陽郡,乃祖之於冶亭,時賢皆集。安欲卒迫試之,執手將別,顧左右取一扇而贈之。宏應聲答曰:『輒當奉揚仁風,慰彼黎庶。』合坐嘆其要捷。性直亮,故位不顯也。在郡卒。

太傅の謝安は宏が機捷辯速なるを賞し、吏部郎より出で東陽郡と為りたるに、乃ち之を冶亭にて祖し、時賢は皆な集まる。安は卒迫にて之を試さんと欲し、手を執りて將に別れなんとせるに、左右を顧み一なる扇を取りて之を贈る。宏は應に聲答して曰く:「輒ち當に仁風を奉揚し、彼の黎庶を慰めん』と。合坐は其の要捷なるに嘆ず。性は直亮なれば、故に位は顯ぜざるなり。郡に在りて卒す。



直亮(文学的表現)
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